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夕稀
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真路が再び戻ってきたときには、第三チェック地点を丁度、サクラと黒鋼が出たところだった。
「凄かったですね。なんで水が来るのが分かったんでしょうか?」
その時、終わったはずの間欠泉がサクラに吹き上げてきた。
黒鋼がサクラを突き飛ばして庇い、黒鋼に直撃した。
「「予選第二位の『黒たん号』残念ながらゴール間近でリタイアです!」」
真路は左手をポケットに入れている黒鋼を心配そうに見ていた。ファイは立ち上がる。
「ファイさん?」
「黒様もここに来るでしょー。だからちょっと行ってくるよー」
「私も行きます!」
「なんで?待ってりゃ良いのに」
「ちゃんとお医者さんに診てもらわないでしょ。黒りんはー」
「え?」
「怪我してないだろ?」
龍王はばっと画面を見返した。
「いや・・・今のは痛そうでした。」
「意地っ張りなんだよーお父さんは」
ファイは微笑んだ。
「ほら、真路ちゃんと小狼君はあっち見て、サクラちゃん応援してあげて。オレと黒たんの分まで。」
「・・・はい」
「「『ウィング・エッグ号』滝に突進したー!!」」
さくらちゃん!?
真路と小狼は思わず身を乗り出した。
サクラは滝の中へ入っていって、ゴールの輪をくぐり抜けた。
「「初出場の『ウィング・エッグ号』!優勝ですー!!」」
「すっげーな、あの子!」
目を輝かせて、画面の向こうを見る小狼も何だか可愛い。
「うん、本当にすごい。」
表彰式には紙吹雪が舞い、知世からサクラに羽根の入ったトロフィーが手渡された。
「「充電電池とは文字通り電池を充電する為のものなのですが、そもそもの始まりは電気を貯められる魚にヒントを得て、作られたものだということは皆様ご存じですよね。」」
「そうなんですか。知りませんでした・・」
「この国にはそんな魚もいるんだな。」
「いやー多分それは嘘なんじゃないかなぁ?」
「え?」
「「その魚は雷魚と言い、稚魚は三センチほどですが、成長すると二メートルにもなるというのは有名な話で・・・」」
もう一人のアナウンサーに掴まれ、引っ張られていった。
「・・・みたいですね。」
サクラと小狼は互いに手を振った。龍王に「仲いいんだな!」といわれて、小狼は赤面する。
真路は「・・・と言うことは、メイロさんの話ももしかして嘘・・?」と一人で考えていた。
「でもさー、変わったなぁと思わない?」
そういって、小狼達の方を見た。
「小狼君、旅の最初は全然笑わなくて、苦しそうで。サクラちゃんは記憶揃ってなかったせいもあるけど、不安そうで。真路ちゃんは身近な人の力を信用できなくて、いつも誰かを心配してて、見守るってことが出来なくて。」
黒鋼に目を移す。
「黒たんは怒ってばっか・・・なのは今も一緒かー」
「あぁ?」
「でも、旅の間に辛いこともあるけど楽しいこともあって、ああやって、あの子達が自分で頑張って笑ってるのを見るとさ、変わったなぁって。」
「そう思えるおまえも変わったんだろ。」
「え・・・」
ファイは本当に驚いたような顔で黒鋼を見返した。
レースも終わって、知世はレースの参加者に宴席を用意した。
それから少しして、ドンという音と共に窓が割れ、ガラスが飛び散った。サクラの持つ羽根の入ったトロフィーにひびが入り始める。
知世は銃を構えてサクラの前に飛び出した。
「羽根をサクラちゃんの中に!」
「え!?」
トロフィーは割れて、中の羽根が飛ばされる。
黒鋼達も追いかけたが、落ちてきた瓦礫に阻まれた。
砂埃の向こう側に人影が見え、羽根を近寄せた。
「あなたは!!」
小狼は急いで走り寄る。しかし間に合わない。
その時、モコナが羽根を吸い込んで、口でキャッチした。
「ちっ!」
「早く!」
「うん!」
モコナは口から羽根を出して、サクラの中に入れた。
「待って・・・!」
サクラの瞼は重く、視界は狭くなっていって、眠ってしまった。
「・・・まったく、ジェイド国といい、また妙な邪魔をしてくれたな。その生き物は。」
「ジェイド国!?じゃあ、あなたはカイル先生!?」
「おまえ達だけが次元を渡れる訳じゃない。異なる世界には同じ顔をした別の人間が居る。けれど本当に別人かは分からない。」
ピッフル社の警備部が駆けつけて、カイルは窓から飛び降り、次元を移動してしまった。
知世を家に招き、事情を聞くことになった。
ピッフル社が一年前、海底で羽根を見つけ、色々と調べたが何なのか分からない。とてつもなく大きな力を持ったもの。
充電電池を公表した後で、知世は知世と同じ姿をした、別の世界の知世・・・日本国の知世姫と夢で会った。それで、小狼達のことを聞いたらしい。
いくら大統領よりも偉いかもしれない知世でも、充電電池の事がすでに公表されていて、誰かに渡して終わりに出来ない事態になっていたので、レースの賞品にしたのだと。
そうしたら、羽根を狙っている誰かもなにか仕掛けてくるだろうし、上手くすればレース中に捕まえられるかもしれない。しかしその人達がどんなことを仕掛けてくるか分からないから、その人達を牽制し、小狼達にも警戒させるために細工をしたということだった。
最後の間欠泉はカイルの仕業だったと言うことも分かった。
いつの間にか流れで、もう一度ここでパーティーをしようということになって、宴会が始まった。
「旅は、いかがですか?」
知世はグラスを持って真路の隣にやってきた。
「楽しいですよ。」
「・・真路ちゃんは私が苦手ですか?」
「え!?そう見えますか?」
真路は少し慌てた。
「私を少し避けていらっしゃった様なので。」
嫌っていたとか、苦手だったとか、そういうわけではなかった。ただ少し、怖かっただけなのだ。近づいていく自分が。
「・・・ごめんなさい。そういうつもりは全然なくって。あの、なんていうか・・えっと・・」
その先が続かなくなって、結局また「ごめんなさい」と言った。
知世はにこりと微笑んだ。
「いいえ、それならよかったですわ。」
向こうで小狼が自分の手袋を両手でもって、ぶんぶん振り回しているのが見える。
「そういえば、知世はお酒強いんですか?」
知世は嬉しそうに笑った。
「初めて呼んでくださいましたね。」
「え・・?」
「私の名前。」
真路は「あ。」と言った。
「えっと、ごめんなさい。もしかして呼び捨てはマズかったですか?」
「いいえ、それが真路ちゃんの呼びやすい呼び方なんでしょう?嬉しいですわ。」
「えっと・・そうですか?」
「はい。」
知世は微笑んだ。
次の日、二日酔いの人が続出して、やっと目を覚ましたサクラと知世がレモネードを作って、みんなに配った。それから部屋に戻っていったかと思うと、昼頃になって、サクラは満面の笑みでモコナを呼んだ。
「魔女さんとお話しできる!?」
「うん!」
モコナは額から光を出して、侑子の姿を映しだした。
「サクラがね、ご用があるんだって。」
サクラは腕に抱えた洋服を見せた。
「お礼できました!」
「貴方が?」
「知世ちゃんに手伝って貰ったんです!」
モコナの口を通して、侑子の手に渡る。
「・・・有り難う。確かに頂いたわ。」
そう言って、「サクラ姫の分だけ」と強調した。
「まぁ、この素敵な服に免じて、各自の服の預かり代も差し引いてあげる。必要になったら言いなさい。」
「・・やっぱりそうなんだ・・。」
「でも、フォンダンショコラの礼、残り四人、忘れないように。」
しっかり念を押して、通信は切れた。
「さすが侑子♥」
「ぜってー礼なんかしねぇぞ!」
「うーん、オレ何にしよー」
「おれも・・」
「私は裁縫の下手さは並じゃないですし・・」
「そうなの?」
「うん。あのね、玉留めできないんです。一生懸命押さえてるつもりなんだけど、布から五センチは上に出来るんですよね・・。」
「じゃ」
モコナは大きな羽根を出した。
「知世ちゃん、また会えるよね。」
「ええ。この国には次元を渡る設備はありませんが、我が社が必ず作って見せますわ。だからきっと、またお会いできます。」
「それは、楽しみですね。」
三人は微笑んだ。
→目次
→next
「凄かったですね。なんで水が来るのが分かったんでしょうか?」
その時、終わったはずの間欠泉がサクラに吹き上げてきた。
黒鋼がサクラを突き飛ばして庇い、黒鋼に直撃した。
「「予選第二位の『黒たん号』残念ながらゴール間近でリタイアです!」」
真路は左手をポケットに入れている黒鋼を心配そうに見ていた。ファイは立ち上がる。
「ファイさん?」
「黒様もここに来るでしょー。だからちょっと行ってくるよー」
「私も行きます!」
「なんで?待ってりゃ良いのに」
「ちゃんとお医者さんに診てもらわないでしょ。黒りんはー」
「え?」
「怪我してないだろ?」
龍王はばっと画面を見返した。
「いや・・・今のは痛そうでした。」
「意地っ張りなんだよーお父さんは」
ファイは微笑んだ。
「ほら、真路ちゃんと小狼君はあっち見て、サクラちゃん応援してあげて。オレと黒たんの分まで。」
「・・・はい」
「「『ウィング・エッグ号』滝に突進したー!!」」
さくらちゃん!?
真路と小狼は思わず身を乗り出した。
サクラは滝の中へ入っていって、ゴールの輪をくぐり抜けた。
「「初出場の『ウィング・エッグ号』!優勝ですー!!」」
「すっげーな、あの子!」
目を輝かせて、画面の向こうを見る小狼も何だか可愛い。
「うん、本当にすごい。」
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表彰式には紙吹雪が舞い、知世からサクラに羽根の入ったトロフィーが手渡された。
「「充電電池とは文字通り電池を充電する為のものなのですが、そもそもの始まりは電気を貯められる魚にヒントを得て、作られたものだということは皆様ご存じですよね。」」
「そうなんですか。知りませんでした・・」
「この国にはそんな魚もいるんだな。」
「いやー多分それは嘘なんじゃないかなぁ?」
「え?」
「「その魚は雷魚と言い、稚魚は三センチほどですが、成長すると二メートルにもなるというのは有名な話で・・・」」
もう一人のアナウンサーに掴まれ、引っ張られていった。
「・・・みたいですね。」
サクラと小狼は互いに手を振った。龍王に「仲いいんだな!」といわれて、小狼は赤面する。
真路は「・・・と言うことは、メイロさんの話ももしかして嘘・・?」と一人で考えていた。
「でもさー、変わったなぁと思わない?」
そういって、小狼達の方を見た。
「小狼君、旅の最初は全然笑わなくて、苦しそうで。サクラちゃんは記憶揃ってなかったせいもあるけど、不安そうで。真路ちゃんは身近な人の力を信用できなくて、いつも誰かを心配してて、見守るってことが出来なくて。」
黒鋼に目を移す。
「黒たんは怒ってばっか・・・なのは今も一緒かー」
「あぁ?」
「でも、旅の間に辛いこともあるけど楽しいこともあって、ああやって、あの子達が自分で頑張って笑ってるのを見るとさ、変わったなぁって。」
「そう思えるおまえも変わったんだろ。」
「え・・・」
ファイは本当に驚いたような顔で黒鋼を見返した。
*
レースも終わって、知世はレースの参加者に宴席を用意した。
それから少しして、ドンという音と共に窓が割れ、ガラスが飛び散った。サクラの持つ羽根の入ったトロフィーにひびが入り始める。
知世は銃を構えてサクラの前に飛び出した。
「羽根をサクラちゃんの中に!」
「え!?」
トロフィーは割れて、中の羽根が飛ばされる。
黒鋼達も追いかけたが、落ちてきた瓦礫に阻まれた。
砂埃の向こう側に人影が見え、羽根を近寄せた。
「あなたは!!」
小狼は急いで走り寄る。しかし間に合わない。
その時、モコナが羽根を吸い込んで、口でキャッチした。
「ちっ!」
「早く!」
「うん!」
モコナは口から羽根を出して、サクラの中に入れた。
「待って・・・!」
サクラの瞼は重く、視界は狭くなっていって、眠ってしまった。
「・・・まったく、ジェイド国といい、また妙な邪魔をしてくれたな。その生き物は。」
「ジェイド国!?じゃあ、あなたはカイル先生!?」
「おまえ達だけが次元を渡れる訳じゃない。異なる世界には同じ顔をした別の人間が居る。けれど本当に別人かは分からない。」
ピッフル社の警備部が駆けつけて、カイルは窓から飛び降り、次元を移動してしまった。
*
知世を家に招き、事情を聞くことになった。
ピッフル社が一年前、海底で羽根を見つけ、色々と調べたが何なのか分からない。とてつもなく大きな力を持ったもの。
充電電池を公表した後で、知世は知世と同じ姿をした、別の世界の知世・・・日本国の知世姫と夢で会った。それで、小狼達のことを聞いたらしい。
いくら大統領よりも偉いかもしれない知世でも、充電電池の事がすでに公表されていて、誰かに渡して終わりに出来ない事態になっていたので、レースの賞品にしたのだと。
そうしたら、羽根を狙っている誰かもなにか仕掛けてくるだろうし、上手くすればレース中に捕まえられるかもしれない。しかしその人達がどんなことを仕掛けてくるか分からないから、その人達を牽制し、小狼達にも警戒させるために細工をしたということだった。
最後の間欠泉はカイルの仕業だったと言うことも分かった。
いつの間にか流れで、もう一度ここでパーティーをしようということになって、宴会が始まった。
「旅は、いかがですか?」
知世はグラスを持って真路の隣にやってきた。
「楽しいですよ。」
「・・真路ちゃんは私が苦手ですか?」
「え!?そう見えますか?」
真路は少し慌てた。
「私を少し避けていらっしゃった様なので。」
嫌っていたとか、苦手だったとか、そういうわけではなかった。ただ少し、怖かっただけなのだ。近づいていく自分が。
「・・・ごめんなさい。そういうつもりは全然なくって。あの、なんていうか・・えっと・・」
その先が続かなくなって、結局また「ごめんなさい」と言った。
知世はにこりと微笑んだ。
「いいえ、それならよかったですわ。」
向こうで小狼が自分の手袋を両手でもって、ぶんぶん振り回しているのが見える。
「そういえば、知世はお酒強いんですか?」
知世は嬉しそうに笑った。
「初めて呼んでくださいましたね。」
「え・・?」
「私の名前。」
真路は「あ。」と言った。
「えっと、ごめんなさい。もしかして呼び捨てはマズかったですか?」
「いいえ、それが真路ちゃんの呼びやすい呼び方なんでしょう?嬉しいですわ。」
「えっと・・そうですか?」
「はい。」
知世は微笑んだ。
次の日、二日酔いの人が続出して、やっと目を覚ましたサクラと知世がレモネードを作って、みんなに配った。それから部屋に戻っていったかと思うと、昼頃になって、サクラは満面の笑みでモコナを呼んだ。
「魔女さんとお話しできる!?」
「うん!」
モコナは額から光を出して、侑子の姿を映しだした。
「サクラがね、ご用があるんだって。」
サクラは腕に抱えた洋服を見せた。
「お礼できました!」
「貴方が?」
「知世ちゃんに手伝って貰ったんです!」
モコナの口を通して、侑子の手に渡る。
「・・・有り難う。確かに頂いたわ。」
そう言って、「サクラ姫の分だけ」と強調した。
「まぁ、この素敵な服に免じて、各自の服の預かり代も差し引いてあげる。必要になったら言いなさい。」
「・・やっぱりそうなんだ・・。」
「でも、フォンダンショコラの礼、残り四人、忘れないように。」
しっかり念を押して、通信は切れた。
「さすが侑子♥」
「ぜってー礼なんかしねぇぞ!」
「うーん、オレ何にしよー」
「おれも・・」
「私は裁縫の下手さは並じゃないですし・・」
「そうなの?」
「うん。あのね、玉留めできないんです。一生懸命押さえてるつもりなんだけど、布から五センチは上に出来るんですよね・・。」
「じゃ」
モコナは大きな羽根を出した。
「知世ちゃん、また会えるよね。」
「ええ。この国には次元を渡る設備はありませんが、我が社が必ず作って見せますわ。だからきっと、またお会いできます。」
「それは、楽しみですね。」
三人は微笑んだ。
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「真路ちゃんは身近な人の力を信用できなくて、いつも誰かを心配してて、見守るってことが出来なくて。」
何度も書き直した言葉です。真路が人を見守れないって事なんですが、どうしてもファイが真路を見守れないみたいになってしまうんですよね・・。
だから、ちょっと流れとしては変ですが、”守ること”の間に”って”ってをいれて、”守るって事”にしてみました。
さて、ピッフル国終了です。私の中では長かった国です。
この国では真路が過去を振り返ったりっていうシーンが無いのはわざとです。
実はこの国は初めはやらないつもりだったりしていました。(話的にあまり進呈がないので。お礼の件は別の所でやろうかと・・)しかし実際は入れて良かったかな、と今では思っています。
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