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本館・徒然日記:CLAMP作品の感想などを綴ってます。雑誌のネタバレですので、コミック派の方はご注意ください。
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嫌な予感がした。
サクラの前に置かれたコップの中のオレンジジュースが不気味に見える。
「そうだ!飛ばなきゃ!!」
「飛ぼう!!」
「姫!」
小狼はサクラを追いかけていった。
「これ、お酒入ってるー。あははははー」
「何!?ガキどもには飲ませるなっつっただろ!!」
「サクラちゃんの注いだのモコナだから犯人はモコナかなー?」
ファイはモコナのコップを手にとって臭いをかいでみる。
「ん?でもこれには入ってないー?」
ブロロロロと音がした。
「駄目です!姫!!」
墜落しているような音がした。
「わー!」
ガッシャーンという音と共にトレーラが揺れた。
黒鋼と真路が立ち上がったのはほぼ同時だった。
「大変!冷やさなきゃ!!」
「ああ!?」
意味が分からない。
真路は「水、水・・」と言って、お酒の入った瓶を手に取った。
「てめぇもか!!」
「あーこれ、モコナのコップだー。入れ替わっちゃったのかなー?」
ファイは真路の前のコップを手にとって言った。
黒鋼は慌てて真路から瓶を奪おうとするが、意外と素早い。
「どいてください、黒鋼!冷やさないと!」
「だから、何をだよ!ってか、冷やさなきゃならねぇのはてめぇの頭だろ!!」
外の方からも嫌な音がする。
「あーくそ!おい、こっちはてめぇが何とかしろ!」
黒鋼はファイにそう言い放って、外の方へ駆けだした。


「酔っぱらいのくせに、なんですばしっこいんだ・・。」
黒鋼ははーっと溜息をついた。
黒鋼はサクラを抱え、真路はファイに抱えられた。それぞれ部屋に寝かせに行く。
ファイが真路に上布団をかけて離れようとしたとき、真路の声がした。
「ん・・・?」
「・・やだ。いや・・・・・ひとりに・・」
うなされているらしい。
「ひとりに、しないで・・・」
何か思うところがあったらしく、ファイは眉をひそめた。
両手で真路の手を握る。
すると真路は強く握り返してきた。
「痛いよ・・真路ちゃん。」
ファイは片方の手だけ放して、真路の頭をそっと撫でた。
真路はふっと顔をゆるめ、穏やかな表情になった。


今日の買い物への運転は小狼だった。先日と同じように真路がサクラの後ろに立って乗っている。
「あの、やっぱり危ないよ・・」
サクラも頷いた。
「大丈夫ですよ。それに、この車二人乗りだけど、どうしてもついていきたかったし。」
「どうして?」
「この国は平和な感じだからあんまり心配ないし。」
黒鋼はまだ起きてきてなかったが、すぐに起きるだろう。
現金だけど、何だか紗羅ノ国からこの世界まで手を繋いでいて貰えて、心に余裕が出来た気がする。
「それに、サクラちゃんはサクラちゃんだけどサクラちゃんだから。」
「え?」
真路はにこりと笑って「やっぱり内緒です。」と言った。
「二日酔いとかは大丈夫なのか?昨日・・」
「二日酔いはあんまりしない方なんです。しても軽いし。」
「そうなんだ。」
「そう言えば、サクラちゃん楽しそうですね。」
モコナはサクラの頭の上に乗ってくる。
「サクラもだけど、真路も楽しそう。予選通ったから?」
「いや、っていうか・・・」
言いかけて、「やっぱり内緒です。」と言う。
「サクラちゃんは?」
「予選のことももちろんあるんだけど、あとね、いい夢見たの。」
真路と小狼はきょとんとする。
「どんな夢?」
「んと・・誰かが手を握ってくれたの。よく憶えてないんだけど、いい夢だったと思うの。起きたとき凄く幸せだったから。」
同じだ、と真路は驚いたが、あえて言わなかった。
あの夢はそっと、自分の胸にしまっておきたい気がした。


マーケットの中を歩いていると、ゴーグルを着けた同じ服装の人達に囲まれた。小狼はサクラの前、真路は後ろ。二人はサクラを庇うようにして立ちはだかる。
「『ドラゴンフライレース』の予選通過者だな。」
「何か?」
「話があるんだ。来て貰おうか。」
三人を囲む人達の後ろから笙悟がやってきた。
「何の用でしょう?」
「来たら話すさ。」
「この場では話せないんですか?」
「まぁな。」
「待っている人がいるので。」
「どうしても、か。」
笙悟は左手で合図した。その周りにいた人達がスケートボードで飛び出してくる。
「益々、来て貰わないとな。」
スケートボードで俊敏に小狼達の回りを回り始めた。
小狼にスタンガンが振りかざされ、小狼はそれを足で受け止めた。足が痺れ、小狼は少しよろめいた。
「小狼君!」
真路の方にもスタンガンが飛んでくる。
「・・遅すぎるよ。」
その男が真路にスタンガンを当てるよりも先にその手首を持った。そして蹴り飛ばす。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。」
小狼は目をつぶって、相手を気配で追おうとする。
「じゃあそっち、お願いしても?私はこっち側やります。」
真路は目を開けたままだった。この速さなら、目をつぶる必要もなかった。
「うん」
次の瞬間にはスタンガンを持った人達だけが突き飛ばされていた。
真路はにこりと笑う。黒鋼の教え方もなかなかだなと思った。
「スタンガン持ってる奴だけを蹴ったのか。」
「それも、その手だけを狙ってね。」
笙悟の後ろから、予選で見かけた男の子と二人の男の子が歩いてきた。
「美しいお嬢さん方。貴女方はきっと無実です。」
そう言って、サクラと真路に花を渡す。

予選通過者の中に『ドラゴンフライレース』で不正を働いた人がいるかもしれないということで、話を聞いて回っていると言う。
花を渡した男の子は妹之山残と名乗った。残の店に移動して、映像を見せて貰う。
「『ドラゴンフライレース』は僕の幼なじみの知世嬢が主催しているレース。不正行為を見逃してはおけません。」
「俺もこの国の自警団として右に同じだ。だから予選通過者の聞き取り調査に手を貸してるんだがな。」
昨日のレースで光る粉が映った後すぐにリタイアが沢山出たと言った。
映像を止めて、その瞬間を見せる。
風はゴールの方から吹いていた。だから犯人は予選通過者の中にいると考えていると話す。
少し間をおいて、残はにこりと笑った。
「やはり、貴女方は無実でした。」
「え?」
「貴方もです、小狼君。」
「どういう事です?」
笙悟はにこりと笑った。
「その椅子、嘘発見器なんだよ。」
心拍、脈拍数共に正常値だという連絡が入ったらしい。
「この国にはそんなものまであるんですか。」
「完璧とは言えませんが、かなりの精度を誇っていると自負しています。ただ、心の底から自分の作った虚構を信じていたり、真の悪人がつく嘘はなかなか見抜けないのですが・・・」
そういって、また微笑む。
「貴女方は違います。きっと」


二人と別れて買い物を済ませ、三人は帰り着くと、モコナがめきょっとなった。その額から侑子の姿が浮かび上がる。
「服は?」
「あぁ!?」
「元いた国での服はどうしたの?」
「紗羅ノ国に置いてきてしまったんです。」
「その後も何だか慌ただしい移動が続いたので。」
侑子の後ろに五人の服が映った。
「紗羅ノ国から回収して置いたわ。」
「有り難うございます。」
「さっさと寄越せ。」
「だめよ。」
「何?」
「これは一度あなた達の手を離れて今はあたしの元にある。返してほしいならば対価がいるわ」
「なんだと!?」
「拾いものは拾った人の物、って事ですねー」
「何をお渡しすればいいですか」
「この服に見合うものを」
「見合うもの・・」
「それはまた大ざっぱですね・・」
「考えついたらモコナに言って、あたしを呼び出しなさい。」
「はい!」
「ああ。でも、あんまり長く待たせると流しちゃうかもね。質流れみたいに」
侑子はにっと笑う。
「え!?」
「質草かよ!!」
黒鋼と小狼はそう言ったが、ファイとサクラは”質流れ”の意味が分かっていない様子だった。
まぁ必要といえば必要かもしれないから払うしかないかなと真路は考える。
それにしても、お姫様のサクラちゃんは”質流れ”なんて知らないだろうけど、魔術師って貴族か何かなのか?

「あ、あの!」
サクラは侑子にモコナのお礼を述べた。
「・・旅はどう?」
「一人だったらきっと、辛かったと思います。でも・・・」
真路達の方に振り返る。
「・・・一緒だから」
真路は微笑んだ。
「じゃあまたね」
サクラはぺこりと頭を下げた。
「そうそう、『ホワイトデー』あんまり待たせ続けると、銀竜とイレズミとあの長刀も質流れさせるわよ」
そう付け加えて、通信は切れた。
黒鋼は激怒する。他の四人は「『ホワイトデー』って・・」と顔を見合わせた。
モコナが桜都国の時フォンダンショコラは『バレンタインデー』と言って、モコナの国ではチョコレートをあげる日のだと説明した。それで『バレンタイン』にチョコレートを貰ったら、『ホワイトデー』にお返しをしなきゃいけない、という。
「だけど誰もお返ししてないから、侑子怒ってるんだと思う。」
「無理矢理押しつけといて、何がお返しだ!!」
「そうだったんだー」
「お返し目的な気がするのは私だけでしょうか・・」
小狼は頭の上のモコナを見上げた。
「何か決まりとかあるのかな?」
「何でも良いんだよ」
黒鋼は散々文句を言っておいて、サクラが侑子にお礼したいと微笑むと黙り込んだ。真路はクスリと笑う。
「じゃ、何をお返しするか考えますか。マーケットでのこともありますし」
「おやつ食べながらにしようよー。手伝ってーお父さーん♥」
「お父さーん♥」
黒鋼はむっとしてモコナを掴み、睨みつける。
そこへ丁度、空から知世がやってきた。


シフォンケーキとお茶を出した。
「それはサクラと真路も一緒に作ったんだよ」
「素晴らしいですわ。・・そういえば、お二人はそっくりですわね。双子なんですか?」
「え?似てますか?」
真路は微笑んだ。
「サクラちゃんとは同い年ですけど違いますよ」
「そうでしたの。私もサクラちゃん、真路ちゃん、とお呼びしても?」
「もちろん!」
「いいですよ」
「じゃあ私も知世ちゃんって呼んでも良いですか?」
「はい、もちろんですわ。」
そう言って、真路の方も見る。
「真路ちゃんも是非そう呼んでくださいな」
「はい」
サクラと知世は優しい表情になる。その中で、真路だけは何となく距離を置いているような様子だった。
マーケットでの話をして、知世は不正をした人を必ず突き止めると話した。
「で、そのお話しできたの?」
「いいえ、実は・・・」
すくっと立ち上がって、「本選では何をお召しになりますの!?」と言った。
「「え?」」
「もう決めてしまわれました?」
「い、いいえ」
「でしたら是非是非!私に作らせてくださいな!」
知世は目をきらきら輝かせていた。真路は何か言いかけて、やめる。
一人、少し不安そうな表情を浮かべていた。それをファイが横目で見ていた。


小狼はサクラの練習につき合って、空を飛んでいた。順調かと思いきや、何やらまた墜落しているらしい。
「特にサクラちゃん。面白すぎるよー」
そこへ真路が丁度、様子を見にトレーラーから出てきた。
「・・・んとに、大丈夫なのかよ。おい」
真路はにこりと笑う。ファイが立ち上がった。
「そっち、任せたままでごめんねー。手伝うよー」
「いえ、もう少しなので」
「こっちは調整終わったしー」
そう言って、二人はトレーラーに入っていった。
真路は洗い物を片づけようと袖をまくろうとして、やめた。
「ん?濡れちゃうよー?」
「あ、いやえっと・・・」
「そう言えば桜都国でも誰もいない間に洗い物してたけど、気にすること無いよ」
気付いてたんだ・・と真路は何だか恥ずかしくなった。
サクラや知世と違って、少しがっしりした腕を長袖で隠したまま、紅潮していた。
「無理に出すことないけど、気にして無理に隠さなくてもいいんじゃないかなぁ」
微笑んで、ファイはスポンジを手にする。
「どんな姿でも、真路ちゃんは真路ちゃんなんだしねー」
優しく笑う。
「だから知世ちゃんが作ってくれるコスチュームが長袖とかじゃなくても、気にすること無いと思うな」
考えていたことが色々と筒抜けで、顔を紅く染める一方、何だか嬉しすぎて涙が出てきそうだった。ファイにそう言われると、袖無しの服すら着れそうな気がしてくる。
真路はぐいっと袖をあげた。
言ってすぐで、しかも突然だったので、ファイは少し驚いた。

「有り難うございます!」
少なくとも今までの旅の中で、一番の笑みだった。
ファイはそれを見て、また微笑んだ。

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2007年もよろしくお願いします。
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