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プロフィール
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夕稀
性別:
女性
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「やはりあの魔女は気付いていますね。遺跡の力に。」
飛王の傍らには星火だけで、他の女の人達の姿は見あたらない。
「クロウ・リードと同じようにな。・・・しかし色々邪魔はしてくれたが、クロウ・リードは死んだ。我が計画を阻むのはあの次元の魔女だけだ。」
「行かせてください。」
飛王は振り返った。
「別の世界に行けば、同じ顔でも別の人間。やつらはそう思っている筈。」
「まさか、以前会った者だとは気が付かない、か。」
二人はにやりと笑う。
「では、次の一手はお前だ。」
「この国のお店はわかりやすいですね」
「まぁな」
「便利ですよね」
サクラと真路は同じ服装に帽子を被っている。背丈も殆ど変わらないので、店内を並んで歩くと双子みたいだった。
対照的だが、似ているように見えてくるから不思議だ。
店員にカードを渡し、黒鋼はパーツを受け取った。黒鋼達の夜摩ノ国での報奨金と、真路の報奨金が換金できたお陰だとサクラは二人に礼を言った。
黒鋼はふん、とだけ答える。
「今回はそうだけど、ジェイド国とかはサクラちゃんのお陰でしたし。」
店員が戻ってきた。
「はい、カード」
「有り難うございます。」
サクラは満面の笑みを見せた。
店員の顔はあっという間に紅く染まる。その後ろからもう一人店員が顔を覗かせた。
「そのパーツを買ったって事は、『ドラゴンフライレース』に出るんですか?」
真路は頷く。
その時店員と目があって、その店員も顔を紅くした。
「お二人が!?」
どうやら真路とサクラのことらしい。
店員は今回のレースは賞品の羽根のせいで荒っぽくなりそうだという。
「やっぱり危ないです!!」
黒鋼は面倒くさそうに向き直って、「行くぞ。」と言った。
「あ、はい!」
サクラは頭を下げてにこりと笑う。
「心配してくださって有り難うございます。」
「とりあえず、頑張ります。」
似ているような似てないような二人は小走りで黒鋼の後に続いた。
「で、本当に出るんですか?レース。」
「うん。」
「危ないっつってたぞ。」
「私に出来ることがあるなら、頑張りたいです。」
真路は微笑んだ。
サクラは黒鋼の隣に座って、真路はサクラの後ろに立つようにして座った。真路は帽子をサクラの膝の上に乗せる。
「持っててくれますか?」
「うん。」
黒鋼は何かぼそりと呟いたが、よく聞こえなかった。
「え?」
黒鋼がいきなり車を走らせるので、サクラは慌てて自分の帽子を押さえる。
前からの車とぶつかりそうになって、キキキと音を立てた。
「申し訳ありません。急いでいて・・!」
相手の運転手は慌てて出てきた。丁度その後ろから顔を上げる少女が見えた。
「知世姫!?」
黒金は思わず車を降りて駆け寄ろうとする。
「黒鋼さん!?」
警戒したその女の人の後ろから、素早く黒い服にサングラスの女の人達が立ちはだかった。
「黒鋼、待っ・・」
「お待ちなさい。」
知世は緊迫する黒鋼とボディーガード達を何事もなかったかのようにすり抜け、サクラと真路の方へ走ってきた。
「見つけましたわ!!」
「え?」
「あの、誰かと間違ってませんか?私達は・・・」
知世は「いいえ」と首を振る。
「ヒロインはあなた方で間違いありませんわ。」
「え!?」
ファイはぽん、と小狼の頭に手を置いた。
「それは小狼君が考えても、今はどうしようもないこと何じゃないかなぁ。」
小狼は顔を上げる。
「だったらさ、とりあえず今は考えないで、ちょっと横に置いとくのはどう?」
ファイは優しく微笑む。
「頑張れば出来ることなら、やってみるのも手だけど、歴史を変える規模だと手に負えないでしょう。出来ないことはできないってちゃんと認めるのも大事だよ。」
―――想像したり、予想するよりも、事実を集めていくように、今君が出来ることをする方が次に繋がると思いませんか?
やはり似ている。・・というか、真路がファイに、似ているんだ。
「今、小狼君が考えなきゃいけないことは?」
「レースに勝つことです。」
車のエンジン音が聞こえて、二人は振り返った。
サクラ達と一緒に、もの凄い数の車がやってきた。
「改めてご挨拶を。わたくし、ピッフル・プリンセス社の社長、知世・ダイドウジと申します。」
「ひょっとしてあのレースの・・・」
「ええ、我が社が主催しています。」
知世はそこでぱっと目を輝かせる。
「せっかくのレース!そして豪華賞品!!」
そのレースの最初から最後までを記録に納めたい、と言った。
「その為には!!」
彼女は両脇の真路とサクラの手を取る。
「レースに出場してくれるヒロインが必要なんですわー。」
真路もサクラも、彼女の勢いには圧されるばかりだった。
さすが黒鋼の国のお姫様・・。
辺りも暗くなって、試運転で一番心配な操縦をしたサクラに、真路と小狼で操縦を教えていた。それにモコナが付き添っている。
「ここでこうハンドルを切れば、失速せずに曲がりますから。」
「結構思いっきり切っても大丈夫ですよ。」
「はい!」
サクラはハンドルを切ってみせる。
「こうね!」
小狼はそっと、彼女の手に手を添えた。
「ゆっくりで大丈夫ですよ。」
サクラは思わず顔を紅くする。小狼もはっとして、慌てて手を離した。
「す、すみません!!」
「う、ううん!ごめんなさい!!」
モコナは楽しそうに微笑んでいた。
「微笑ましいねぇ。」
いつの間にか真路がトレーラーの中に入ってきていた。息が上がっている。
「ええ・・。お邪魔してしまいました。」
何故か真路まで恥ずかしくなってきて、顔は少し紅かった。
「・・・微笑ましいモードになるならなるで、せめて三十秒前に知らせてくれたら私、どっか行っとくんですけど・・。」
「あははーそれは無茶じゃあないかなー」
黒鋼は持っていた瓶の酒を飲み干してしまったらしく、空の瓶をテーブルの上に置いた。
「で、お前は調整終わったのかよ。」
「ええ。・・っていっても、私は機械オンチなので、小狼君に見てもらったんですけどね。」
ファイは黒鋼に新しい瓶を渡す。
「・・そういえば、今日の黒たんも微笑ましかったー」
「ああ?」
「知世ちゃん。」
黒鋼の眉間に皺が寄った。
「黒たんの国のお姫様にそっくりだったんでしょ?」
そこで悪戯っぽく笑う。
「いっつも以上に喋らないのにやっぱり知世ちゃんのこと気にしてて面白かったよー黒りん。」
真路はクスクスと笑った。
「じゃあ私は予備のパーツを一応取ってきますね。」
「ああ?調整は終わったんじゃねぇのかよ。」
「必要なのは私じゃありませんよ。」
そう言って真路は部屋の方へ上がっていった。
ファイはそれを見届けて、また瓶に口を付ける。
「でも、結構会うもんだねぇ。姿は同じでも、同じじゃない人に。」
「・・・お前はまだ会ってねぇようだな。逃げ続けなきゃならねぇ理由と。」
ガツンと音がして、トレーラーが揺れた。
「ごめんさい!!」
ドラゴンフライからは煙がもくもくと上がっていた。真路は手に道具を抱え、慌てて駆け下りてくる。
「大丈夫ですか?一応救急箱も持ってきましたけど。」
「大丈夫、ありがとう。」
その様子をトレーラーの中から黒鋼とファイが見ていた。
「サクラちゃんの為だったんだー、予備のパーツって。」
「・・っとに、大丈夫なのかよ。」
ドラゴンフライレース、予選の最初から、早くもサクラは危うい操縦だった。それをバックミラー越しに黒鋼がちらりと目をやる。
「サクラちゃん心配してるんだー。やっさしー」
むっとしてスピードを上げ、ファイから引き離した。
「待ってよーう。」
ファイもすぐに追いつき、その後ろから真路が飛んできた。
「あの、一応予選だから二十位以内に入れば良いんですけど。」
「これは勝負だろうが。」
「それもそうだねー」
ファイはにっと笑った。
「んじゃ。」
いきなりスピードを上げて、あっという間に離れていく。
「予選を通過したら本選だから、他の出場者に目を付けられない程度の順位を取った方が・・・と思ったんだけど・・・・」
黒鋼もすぐにファイを追っていって、真路はその場に残された。
二人はもう自分の指ぐらいの大きさになっている。
「・・あ~もうっ!!」
足にぐっと力を入れた。
真路も実は負けず嫌いだったらしい。
テレビ中継のアナウンサーの声が響く。
「「・・・っと!上位入賞常連組に続いて、今回初エントリーの二人!『ツバメ号』『黒たん号』・・」」
「てめぇなんっつう名前つけやがった!!」
「可愛い名前の方がいいかなーって。オレのはモコナがつけてくれたんだよー。」
「「・・って!その後ろからもの凄いスピードで同じく初エントリー『ヒバリ号』が!!」」
沢山のドラゴンフライが空を飛ぶ中、それを器用に避けつつ、スピードを緩めることはない。ヒバリ号はすぐにツバメ号、黒たん号に追いついてきた。
その時三人ははっとして顔を上げる。前から突風が吹き込んできて、ツバメ号は右、黒たん号は左、ヒバリ号は急降下して避けた。
「「ドラゴンフライは非常に軽量です!その為風の影響を受けやすい!!」」
小狼も回避。風はサクラ達の方へ。
サクラは突風の回りをぐるりと回るようにしてターンした。
「「これはすごいー!初エントリーの『ウィング・エッグ号』見事なターンです!!」」
「サクラちゃん格好いいー」
小狼がサクラに親指を立てて見せた。サクラは微笑んで同じようにする。
そのサクラの笑顔を見て真路ははっとした。
どうして今まで気付かなかったんだろう。
今やっと、最初に次元の魔女の店で”似ている”と思った理由が分かった。
そうか、この子は・・・
知世にスポットライトが当たった。今回の優勝賞品の羽根を掲げている。
その光が指し示す塔がゴールらしい。
「「さあ!盛り上がって参りました!あの電池は誰の手にー!?」」
「あれが羽根なら勝つ必要無いんじゃねぇのか。」
「んー?」
「もしかして奪っちゃって、そのまま次の世界に逃げちゃえばいいのに、ってことですか?」
「黒様悪いひとだー。いっそすがすがしいねぇ。」
「てめぇには言われたかねぇよ!」
「考えなかった訳じゃないですけど、それはちょっと・・」
「真路ちゃんはいいひとだねぇ」
「ありがとうございます」
ファイは知世の方に目を移す。
「でも、あれは捕ってもしょうがないかもー」
アナウンサーの『フライゴンドラ』が『ピッフル号』に急接近する。
「「それがこの町の殆どの電力をまかなえるという充電電池!!」」
「の、模造品ですわ。」
「え!?」
小狼は思わず声をあげた。
「本物は我が社が厳重に保管していますわ。」
「・・まぁ、あれだけのボディーガードを連れてるような人があっさり奪われることはないでしょうしね。」
「というわけで、真面目にやらないとねぇ。」
「「更にスピードを上げる先頭集団!・・・って、いきなり後ろからぶっちぎりだー!強引に飛び出したのは黒たん号!!」」
「だからその名前は呼ぶな!!」
凄い形相がアナウンサーの横を通りすぎていった。
「「『ヒバリ号』猛スピードでそれを追いかけていきます。それに『ツバメ号』が続きます。」」
「真路ちゃんも意外と負けず嫌いなんだねぇ。」
「「今回のレース初参加で優勝もあり得そうだー!」」
カメラは中盤の方に移った。
小狼は中盤集団のトップに踊り出し、サクラも中盤集団を追って、スピードを上げ始めた。
その頃、真路の『ヒバリ号』が黒鋼の『黒たん号』を追い抜き、ゴールした。
二位黒鋼、三位ファイという順番で次々と順位が決まっていく。
「あー・・・しまった。思わず本気で・・」
自分で予選だから手を抜いた方がと言おうとしたくせにと溜息をついた。
「真路ちゃん一位おめでとー。凄いねぇ。」
「ファイが本気出してたら分かりませんでしたよ。」
「そんなことないでしょー」
にこりとファイが微笑む。
その時、パンと音がした。
「え?」
空には沢山のパラシュートが落ちていく。
周りもざわめいてきた。何が起こっているのか分からない。しかし脱落者がいきなりこんなに出るなんておかしい。
「「調整に問題があったかー!?」」
小狼がその煙の中から飛び出すのが見えた。
十一位でゴールする。
「やったー」
四人が見守る中、中継の「「後一人ー!」」という声が聞こえた。
サクラは譲刃とほぼ同時にゴール。カメラ判定となり、サクラが二十人目に決まった。
それを喜ぶ中、知世は神妙な顔つきになった。
「あの煙の中の光の粉を採取して成分分析を。レースに不正があったかもしれませんわ。」
→目次
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飛王の傍らには星火だけで、他の女の人達の姿は見あたらない。
「クロウ・リードと同じようにな。・・・しかし色々邪魔はしてくれたが、クロウ・リードは死んだ。我が計画を阻むのはあの次元の魔女だけだ。」
「行かせてください。」
飛王は振り返った。
「別の世界に行けば、同じ顔でも別の人間。やつらはそう思っている筈。」
「まさか、以前会った者だとは気が付かない、か。」
二人はにやりと笑う。
「では、次の一手はお前だ。」
*
「この国のお店はわかりやすいですね」
「まぁな」
「便利ですよね」
サクラと真路は同じ服装に帽子を被っている。背丈も殆ど変わらないので、店内を並んで歩くと双子みたいだった。
対照的だが、似ているように見えてくるから不思議だ。
店員にカードを渡し、黒鋼はパーツを受け取った。黒鋼達の夜摩ノ国での報奨金と、真路の報奨金が換金できたお陰だとサクラは二人に礼を言った。
黒鋼はふん、とだけ答える。
「今回はそうだけど、ジェイド国とかはサクラちゃんのお陰でしたし。」
店員が戻ってきた。
「はい、カード」
「有り難うございます。」
サクラは満面の笑みを見せた。
店員の顔はあっという間に紅く染まる。その後ろからもう一人店員が顔を覗かせた。
「そのパーツを買ったって事は、『ドラゴンフライレース』に出るんですか?」
真路は頷く。
その時店員と目があって、その店員も顔を紅くした。
「お二人が!?」
どうやら真路とサクラのことらしい。
店員は今回のレースは賞品の羽根のせいで荒っぽくなりそうだという。
「やっぱり危ないです!!」
黒鋼は面倒くさそうに向き直って、「行くぞ。」と言った。
「あ、はい!」
サクラは頭を下げてにこりと笑う。
「心配してくださって有り難うございます。」
「とりあえず、頑張ります。」
似ているような似てないような二人は小走りで黒鋼の後に続いた。
「で、本当に出るんですか?レース。」
「うん。」
「危ないっつってたぞ。」
「私に出来ることがあるなら、頑張りたいです。」
真路は微笑んだ。
サクラは黒鋼の隣に座って、真路はサクラの後ろに立つようにして座った。真路は帽子をサクラの膝の上に乗せる。
「持っててくれますか?」
「うん。」
黒鋼は何かぼそりと呟いたが、よく聞こえなかった。
「え?」
黒鋼がいきなり車を走らせるので、サクラは慌てて自分の帽子を押さえる。
前からの車とぶつかりそうになって、キキキと音を立てた。
「申し訳ありません。急いでいて・・!」
相手の運転手は慌てて出てきた。丁度その後ろから顔を上げる少女が見えた。
「知世姫!?」
黒金は思わず車を降りて駆け寄ろうとする。
「黒鋼さん!?」
警戒したその女の人の後ろから、素早く黒い服にサングラスの女の人達が立ちはだかった。
「黒鋼、待っ・・」
「お待ちなさい。」
知世は緊迫する黒鋼とボディーガード達を何事もなかったかのようにすり抜け、サクラと真路の方へ走ってきた。
「見つけましたわ!!」
「え?」
「あの、誰かと間違ってませんか?私達は・・・」
知世は「いいえ」と首を振る。
「ヒロインはあなた方で間違いありませんわ。」
「え!?」
*
ファイはぽん、と小狼の頭に手を置いた。
「それは小狼君が考えても、今はどうしようもないこと何じゃないかなぁ。」
小狼は顔を上げる。
「だったらさ、とりあえず今は考えないで、ちょっと横に置いとくのはどう?」
ファイは優しく微笑む。
「頑張れば出来ることなら、やってみるのも手だけど、歴史を変える規模だと手に負えないでしょう。出来ないことはできないってちゃんと認めるのも大事だよ。」
―――想像したり、予想するよりも、事実を集めていくように、今君が出来ることをする方が次に繋がると思いませんか?
やはり似ている。・・というか、真路がファイに、似ているんだ。
「今、小狼君が考えなきゃいけないことは?」
「レースに勝つことです。」
車のエンジン音が聞こえて、二人は振り返った。
サクラ達と一緒に、もの凄い数の車がやってきた。
「改めてご挨拶を。わたくし、ピッフル・プリンセス社の社長、知世・ダイドウジと申します。」
「ひょっとしてあのレースの・・・」
「ええ、我が社が主催しています。」
知世はそこでぱっと目を輝かせる。
「せっかくのレース!そして豪華賞品!!」
そのレースの最初から最後までを記録に納めたい、と言った。
「その為には!!」
彼女は両脇の真路とサクラの手を取る。
「レースに出場してくれるヒロインが必要なんですわー。」
真路もサクラも、彼女の勢いには圧されるばかりだった。
さすが黒鋼の国のお姫様・・。
*
辺りも暗くなって、試運転で一番心配な操縦をしたサクラに、真路と小狼で操縦を教えていた。それにモコナが付き添っている。
「ここでこうハンドルを切れば、失速せずに曲がりますから。」
「結構思いっきり切っても大丈夫ですよ。」
「はい!」
サクラはハンドルを切ってみせる。
「こうね!」
小狼はそっと、彼女の手に手を添えた。
「ゆっくりで大丈夫ですよ。」
サクラは思わず顔を紅くする。小狼もはっとして、慌てて手を離した。
「す、すみません!!」
「う、ううん!ごめんなさい!!」
モコナは楽しそうに微笑んでいた。
「微笑ましいねぇ。」
いつの間にか真路がトレーラーの中に入ってきていた。息が上がっている。
「ええ・・。お邪魔してしまいました。」
何故か真路まで恥ずかしくなってきて、顔は少し紅かった。
「・・・微笑ましいモードになるならなるで、せめて三十秒前に知らせてくれたら私、どっか行っとくんですけど・・。」
「あははーそれは無茶じゃあないかなー」
黒鋼は持っていた瓶の酒を飲み干してしまったらしく、空の瓶をテーブルの上に置いた。
「で、お前は調整終わったのかよ。」
「ええ。・・っていっても、私は機械オンチなので、小狼君に見てもらったんですけどね。」
ファイは黒鋼に新しい瓶を渡す。
「・・そういえば、今日の黒たんも微笑ましかったー」
「ああ?」
「知世ちゃん。」
黒鋼の眉間に皺が寄った。
「黒たんの国のお姫様にそっくりだったんでしょ?」
そこで悪戯っぽく笑う。
「いっつも以上に喋らないのにやっぱり知世ちゃんのこと気にしてて面白かったよー黒りん。」
真路はクスクスと笑った。
「じゃあ私は予備のパーツを一応取ってきますね。」
「ああ?調整は終わったんじゃねぇのかよ。」
「必要なのは私じゃありませんよ。」
そう言って真路は部屋の方へ上がっていった。
ファイはそれを見届けて、また瓶に口を付ける。
「でも、結構会うもんだねぇ。姿は同じでも、同じじゃない人に。」
「・・・お前はまだ会ってねぇようだな。逃げ続けなきゃならねぇ理由と。」
ガツンと音がして、トレーラーが揺れた。
「ごめんさい!!」
ドラゴンフライからは煙がもくもくと上がっていた。真路は手に道具を抱え、慌てて駆け下りてくる。
「大丈夫ですか?一応救急箱も持ってきましたけど。」
「大丈夫、ありがとう。」
その様子をトレーラーの中から黒鋼とファイが見ていた。
「サクラちゃんの為だったんだー、予備のパーツって。」
「・・っとに、大丈夫なのかよ。」
*
ドラゴンフライレース、予選の最初から、早くもサクラは危うい操縦だった。それをバックミラー越しに黒鋼がちらりと目をやる。
「サクラちゃん心配してるんだー。やっさしー」
むっとしてスピードを上げ、ファイから引き離した。
「待ってよーう。」
ファイもすぐに追いつき、その後ろから真路が飛んできた。
「あの、一応予選だから二十位以内に入れば良いんですけど。」
「これは勝負だろうが。」
「それもそうだねー」
ファイはにっと笑った。
「んじゃ。」
いきなりスピードを上げて、あっという間に離れていく。
「予選を通過したら本選だから、他の出場者に目を付けられない程度の順位を取った方が・・・と思ったんだけど・・・・」
黒鋼もすぐにファイを追っていって、真路はその場に残された。
二人はもう自分の指ぐらいの大きさになっている。
「・・あ~もうっ!!」
足にぐっと力を入れた。
真路も実は負けず嫌いだったらしい。
テレビ中継のアナウンサーの声が響く。
「「・・・っと!上位入賞常連組に続いて、今回初エントリーの二人!『ツバメ号』『黒たん号』・・」」
「てめぇなんっつう名前つけやがった!!」
「可愛い名前の方がいいかなーって。オレのはモコナがつけてくれたんだよー。」
「「・・って!その後ろからもの凄いスピードで同じく初エントリー『ヒバリ号』が!!」」
沢山のドラゴンフライが空を飛ぶ中、それを器用に避けつつ、スピードを緩めることはない。ヒバリ号はすぐにツバメ号、黒たん号に追いついてきた。
その時三人ははっとして顔を上げる。前から突風が吹き込んできて、ツバメ号は右、黒たん号は左、ヒバリ号は急降下して避けた。
「「ドラゴンフライは非常に軽量です!その為風の影響を受けやすい!!」」
小狼も回避。風はサクラ達の方へ。
サクラは突風の回りをぐるりと回るようにしてターンした。
「「これはすごいー!初エントリーの『ウィング・エッグ号』見事なターンです!!」」
「サクラちゃん格好いいー」
小狼がサクラに親指を立てて見せた。サクラは微笑んで同じようにする。
そのサクラの笑顔を見て真路ははっとした。
どうして今まで気付かなかったんだろう。
今やっと、最初に次元の魔女の店で”似ている”と思った理由が分かった。
そうか、この子は・・・
知世にスポットライトが当たった。今回の優勝賞品の羽根を掲げている。
その光が指し示す塔がゴールらしい。
「「さあ!盛り上がって参りました!あの電池は誰の手にー!?」」
「あれが羽根なら勝つ必要無いんじゃねぇのか。」
「んー?」
「もしかして奪っちゃって、そのまま次の世界に逃げちゃえばいいのに、ってことですか?」
「黒様悪いひとだー。いっそすがすがしいねぇ。」
「てめぇには言われたかねぇよ!」
「考えなかった訳じゃないですけど、それはちょっと・・」
「真路ちゃんはいいひとだねぇ」
「ありがとうございます」
ファイは知世の方に目を移す。
「でも、あれは捕ってもしょうがないかもー」
アナウンサーの『フライゴンドラ』が『ピッフル号』に急接近する。
「「それがこの町の殆どの電力をまかなえるという充電電池!!」」
「の、模造品ですわ。」
「え!?」
小狼は思わず声をあげた。
「本物は我が社が厳重に保管していますわ。」
「・・まぁ、あれだけのボディーガードを連れてるような人があっさり奪われることはないでしょうしね。」
「というわけで、真面目にやらないとねぇ。」
「「更にスピードを上げる先頭集団!・・・って、いきなり後ろからぶっちぎりだー!強引に飛び出したのは黒たん号!!」」
「だからその名前は呼ぶな!!」
凄い形相がアナウンサーの横を通りすぎていった。
「「『ヒバリ号』猛スピードでそれを追いかけていきます。それに『ツバメ号』が続きます。」」
「真路ちゃんも意外と負けず嫌いなんだねぇ。」
「「今回のレース初参加で優勝もあり得そうだー!」」
カメラは中盤の方に移った。
小狼は中盤集団のトップに踊り出し、サクラも中盤集団を追って、スピードを上げ始めた。
その頃、真路の『ヒバリ号』が黒鋼の『黒たん号』を追い抜き、ゴールした。
二位黒鋼、三位ファイという順番で次々と順位が決まっていく。
「あー・・・しまった。思わず本気で・・」
自分で予選だから手を抜いた方がと言おうとしたくせにと溜息をついた。
「真路ちゃん一位おめでとー。凄いねぇ。」
「ファイが本気出してたら分かりませんでしたよ。」
「そんなことないでしょー」
にこりとファイが微笑む。
その時、パンと音がした。
「え?」
空には沢山のパラシュートが落ちていく。
周りもざわめいてきた。何が起こっているのか分からない。しかし脱落者がいきなりこんなに出るなんておかしい。
「「調整に問題があったかー!?」」
小狼がその煙の中から飛び出すのが見えた。
十一位でゴールする。
「やったー」
四人が見守る中、中継の「「後一人ー!」」という声が聞こえた。
サクラは譲刃とほぼ同時にゴール。カメラ判定となり、サクラが二十人目に決まった。
それを喜ぶ中、知世は神妙な顔つきになった。
「あの煙の中の光の粉を採取して成分分析を。レースに不正があったかもしれませんわ。」
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日本の一話の時に、サクラちゃんを見て誰かに似ている気がする というのがあったんですが・・・・忘れちゃってる方も多いのではないかと;
実を言うと私もジェイド国辺りは忘れていました。(ヲイ)
なんか、もうそれは明かしてしまっていたような気になってて・・。
それから明かす機会が無くって・・。
結果、伏線の結末がこんなにも遅くなってしまいました。
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