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本館・徒然日記:CLAMP作品の感想などを綴ってます。雑誌のネタバレですので、コミック派の方はご注意ください。
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月が最も近く、崩壊しつつあるその場所に阿修羅王は一人、残っていた。 

「聞こえるか、魔女よ。」
「聞こえているわ。」
「あの子達でなければ、夜叉王の幻を消して、羽根を返す決心はつかなかったかもしれんな。」
侑子は手元の鏡に阿修羅王の姿を映していた。
「・・頼みがある。」
「対価がいるわ。その望みに見合うだけの。」
「わかっている。」
「では願いを。」 

「私と夜叉王を後の世の神に。」
「・・何故?」
「神にも出来ぬ事があるという証に。・・黄泉へと渡った者は二度と戻らない。」
侑子と黒いモコナは鏡に目を落とす。 

「燃える炎の如く、流れゆく時間に同じものは何ひとつない。変わるからこそ、戻らぬからこそ、一度しかない生を悔いなく生きろと願う神に・・」 



月の城はかっと光り、弾けるように吹き飛んだ。
阿修羅城の前で、阿修羅族は涙を流す。夜叉王は死に、阿修羅王ももういない。
願いが叶うという城ももうない。 


無くなった命は少なくとも還ってこない。
私は自分の命のために仲間をも殺したし、敵などは数すら憶えてない。私の奪った命も一つとして還ってこない。
わかってて、昔親友を手にかけた。 

私の命はそんなに大事なものだったのか?
じゃあ私は一体何のために生きてるんだ?
あの国に帰ったって、私は前に進めるのか?
未だにわからないまま、私は旅している。矛盾している。 

―――・・・こんなヤツ、殴る手がもったいない! 


しかし月は残された者達に差し込んでいる。
崩壊し、失われたものもあるけれど、また、新しく生まれ、育まれていくべきものもあるのだ。
どんな形であれ、前に進むしかない。

真路は深い溜息をついた。
「やっぱまだまだだ。鍛錬のやり直しだな。」
「え!?」
驚いて振り向く小狼にファイが黒鋼の後ろからにこりと微笑んだ。
「黒ぽっぽきびしー。」
「黒鋼さん!!?ファイさん!?」
「はーい!」
目が黒かったのは夜摩ノ国の方に落ちるとそうなるみたいだとか、そんなことを話していた。
二人とは半年もずれて落ちたらしく、黒鋼が少し夜叉族の言葉が分かったので、黒鋼が話し、ファイは口が利けないことにしていたのだと言う。
真路も馬から下りて、三人に歩み寄る。 

「・・でも、だったら私もそっちに落ちたかったです。」
思ってもないことを言ってみる。
「私は目が黒いんで、最初夜叉族と間違えられて色々大変でしたから。」 

しかし結果的に、阿修羅王に会えて良かったと思っていた。ファイと長く離れていて、寂しかったけれど。
それでも修羅ノ国に落ちて得たものは大きかった。
「そうなんだ、大丈夫だったー?」
「ええ。誰かさんと戦った時までは無傷でしたし。」
一方的な加害者のように見られて、黒鋼は思わず声を荒立てた。
「あれは勝負だろうが!」
「一応からかったつもりなんですけど。本気にされるとは・・」
黒鋼はますますむっとする。
真路は不敵に笑った。 

「真路ちゃんは気付いてたよねー?」
「え!?そうなのか?」
小狼は驚いて真路を見る。小狼が真路に対して敬語でないことに黒鋼とファイは少し驚いた様だった。真路は少し分が悪そうにする。
「えっと・・はい、すいません。」
「真路ちゃん黒ろんに進んで攻撃してこなかったもんねー。」
久しぶりに聞く、ファイ独特の喋り方が何だか嬉しかった。
「最初会ったときに気付いたんですけど、何にも反応しないので・・・一応様子を見ようと思って、黙ってました。次会ったとき、黒鋼は小狼君ばっかり狙うので何となく理由は分かりましたけど・・」
黒鋼をちらりと見る。 

「阿修羅王の方に来るから。止めるしかなくなったじゃないですか・・。」
溜息混じりに言った。小狼はまだ状況がいまいち掴めていない様子だった。
「黒様が、オレ達だって言っちゃうと小狼君、本気出さないからってー。一応これでも小狼君の剣の先生だからねー。」
「そ、そうだったんですか・・。」
「これでもたぁなんだ!」
真路はクスリと笑う。
小狼はそれを見て、いつの間にか真路がいつもの真路だなと思った。阿修羅城でよく月の城を眺めていたのを思い出した。寂しかったのかもしれないと思う。
小狼は深々と黒鋼に頭を下げた。
「・・有り難う御座います。」
「何だ?」
「おれの剣の上達を考えて下さったんですよね。有り難う御座います。」
黒鋼は目を横にそらした。
「・・ふん。」 

「わーい黒様照れてるー。」
「誰が照れてる!!」
黒鋼は刀を振るい、ファイは器用にそれを避けた。
そこへサクラが駆けてくる。腕にモコナを抱えていた。
「黒鋼さん!ファイさん!!」
「サクラちゃん久しぶりー。」
小狼はすかさず持っていた羽根をサクラの中に入れる。サクラはそのまま小狼に受け止められて眠り、モコナはファイにキャッチされた。
モコナは宙に浮いて、翼を広げた。
「やっと移動かよ。」 

ファイは黒鋼の手を引っ張り、サクラを抱える小狼と傍にいた真路を一緒に抱え込んだ。
真路は思わずドキッとして、赤面してしまい、顔が上げられない。
「なっ・・なっ・・」
「てめ!何しやがる。」
「また離れて落っこちないようにー。」
ファイはいつもと変わらない調子で言った。
抱え込まれているのは自分だけではなく、小狼もなのだが、モコナに吸い込まれてしまうまでのこの時間がいつもより三倍は遅くてもいいと思った。 

しばらく、すべてを忘れてこのまま止まっていたい。
しかしモコナの口の中に五人の姿はいつもより三倍速で解けていく。 


倶摩羅は今にも掴みかかりそうな勢いで「待て!!」と言った。
「やはりお前達は夜叉族と通じていたのだな!」
「違います。・・もしそうだとしても、もう二人の王はいません。」
倶摩羅は眉を寄せる。
「もし王の亡骸か、形見の一部でも見つかったら、どうか離さず、一緒に葬って差し上げてください。」
思い直したような、倶摩羅の表情が最後に見えた。



五人が次の世界に着地すると、辺りには見覚えのある風景が広がっていた。黒鋼とファイが最初に落ちた陣社だった。
しかし、陣社の氏子と遊花区の人達が仲良さそうに行き交っている。更に、陣社では蒼石と鈴蘭の結婚式が行われていた。開帳された阿修羅像と夜叉像は一緒に並べられている。
「こんなに周りの様子が同じなのに、違う国・・ってことはないですよね?」
「もしかしたら、修羅ノ国は紗羅ノ国のずっと昔の姿だったんじゃないでしょうか?」
「場所は同じで、現在から過去、過去からまた現在と、時間だけ移動したって事かー。」
「でもどうしてこんなに紗羅ノ国の様子が違うんでしょう。」
モコナも頷く。
「なんか女の人と男の人すっごく仲悪かったよね。」

―――どうか離さず、一緒に葬って差し上げてください。 

小狼は思いついたように顔を上げた。
「ひょっとして・・」
小狼が口に出す前に、ファイが口にした。
「未来が変わった、か。」
「なるほど、可能性はあります。」
黒鋼はよく分かってない様だ。
「以前は、阿修羅像は一人きりでした。」
「夜叉像もね。」
「未来から来たおれが、あの時、おれが言った言葉を阿修羅族の人達はちゃんと受け止めてくれて、それで二つの像を離すことなく一緒に祭った。」
「そして共にある二つの像は怪異を起こすこともない。」
「怪異が起こることも無いんだから、陣社と遊花区がもめることもないですよね。」 

未来を変えてしまったかもしれないことに責任を感じているらしい小狼に対して、サクラは前向きかもしれない。 「良かったです。みんな、あんなに楽しそうで。」 

モコナは突然、大きく口を開けて、二つの像の中身を吸い込んだ。にぱっと笑う。
「モコナ108の秘密技の一つ超吸引力なの。ダイソンにも負けないよ。」
「・・ダイソン?」
「秘密技でも何でもねぇだろ!しょっちゅうやってんじゃねぇか!」
「守り神の中身を吸い込んで・・」
「い、いいのかな。」
「まずいんじゃーないかなー。」
「絶対まずいでしょう。」
結婚式の方がわっ、と盛り上がって、そちらを振り返ると、鈴蘭一座からの演技があっていて、火の粉が舞う。
モコナはまた、大きく翼を広げた。

ファイは真路の手を握る。そして小狼の肩を持った。
真路は驚いて、そっとファイの顔を見上げた。ファイはいつもと何も変わらないかのように笑っている。
互いが想い合うサクラと小狼のような雰囲気ではなかった。 

しかし、十二分に嬉しい。
それでも手と手が触れているだけなのに、少し近づけた気がした。
それを横目で、黒鋼が見ていた。

「ほら、小狼君はサクラちゃんを。離れちゃわないように、ね。」
二人は戸惑い、少し顔を紅くして、ゆっくり手を近づけ、繋ぐ。サクラと小狼の様子は何だかあちらにいる鈴蘭と蒼石と重なるようだった。

「お幸せに。」

モコナの吸い込むスピードはどんどん速くなっているのではないか?
そう思うほどに速い。しかしスローモーションだった。
この時だけは、少しだけ鍵の感触は忘れていたかもしれない。そのくらいドキドキしていたし、それに気づくこともできないくらい、幸せだった。
次の世界には瞬きしてる間についてしまったような感じがしたけれど。


黒いモコナは口から阿修羅像と夜叉像の中身。阿修羅王と夜叉王の剣を吐き出した。
侑子はそれを阿修羅王と同じように、大切に抱え込む。
「・・・二人の神を創った対価」

その目に映るのは最期の阿修羅王の姿だったのかもしれない。
「・・確かに、頂いたわ。」

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とんでもなく、二転三転とした話でした。
最初の方はずっと変わってないんですが、最後の描写部分。
この国って、もう一度紗羅ノ国に行って、それからまた別の世界へ・・なので、その二回にどういう違いを出そうかと・・。
ボツった二度目の移動、最後の部分は・・(以下反転)

ファイは黒鋼の肩に手を伸ばす。そして小狼の肩を持った。
真路は驚いて、しかし顔を上げることはできなかった。
ファイはいつもと何も変わらないかのように笑っている。
それを横目で、黒鋼が見ていた。
「ほら、小狼君はサクラちゃんを。離れちゃわないように、ね。」
二人は戸惑い、少し顔を紅くして、ゆっくり手を近づけ、繋ぐ。サクラと小狼の様子は何だかあちらにいる鈴蘭と蒼石と重なるようだった。

二人は気まずい空気など気づくことはない。

「お幸せに。」
とても、微笑ましかった。


・・・・つまり、手つながなかったんですよね。
ピッフル国でそれをはっきりさせるつもりでした。
しかしさすがに可哀想ですし、今まで真路の為のシーンが全体的に少なかったですし・・ってことで急遽却下です。
その為、後々の世界も色々と変えることに・・。(そんなに案があったわけじゃないですけど)
大きな例でいえば、本当は極東国、修羅・紗羅の次にやろうと思ってたんですけどやめました。


ちなみに結構好評だった短編のツバサ劇場。「白雪姫」とか「眠れる森の美女」で考えてるんですが・・あの「シンデレラ」は実は下書き無しで書いたのに、なかなかいいのができません。
(正しくは「シンデレラ」は昔、下書き無しで書いたのを誤字脱字を修正して書いたものですけど。)

気長にお願いします・・。
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