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本館・徒然日記:CLAMP作品の感想などを綴ってます。雑誌のネタバレですので、コミック派の方はご注意ください。
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男の前で、鏡は砂嵐のようにザザザと音を立てるだけで、何も映さなかった。
「想定範囲外の世界に移動してしまいましたね、飛王・リード。」
黒い服装に、白い蝙蝠のような形の飾りを頭に付けた女性は言った。
飛王の座る、蝙蝠の模様の付いた椅子の回りには黒い蝙蝠形の襟がついた白い服の女の人達が立っている。
「これまでこちらの思い通りの世界に落とせていたというのに。」
「・・・けれど、これからはどの世界に落ちるのか、コントロール不能です。」
「これも、あの魔女の仕業か。・・思ったより、出番が早くなるかもしれないな。小狼の。」
沢山の文字に囲まれた黒い部屋。
その中の水槽の中で両腕に文字が刻まれ、左目に眼帯を付けた少年――小狼そっくりの少年が、眠っていた。


サクラと真路の手は料理を持ったまま、口の前で止まっていた。

「口に合わなかったか?」
二人ははっとして、阿修羅王を見上げた。
「「いえ!」」
まさに異口同音。それにサクラが「すごくおいしいです!!」と付け足した。
顔を上げるタイミングまでほぼ同じで、阿修羅王は思わずクスリと笑った。
「真路は月の城から戻ってきて、様子がおかしいようだが、あそこで何かあったのか?」
”月の城”という言葉で、モコナとサクラは何となく真路の方を見た。月の城といえば、ファイと黒鋼らしき二人があちら側にいるということは分かっていたからだ。
しかしここでサクラ達が考えた理由は一因でもあったが、主な理由とは違っていた。

「・・・いえ。」
阿修羅王のことは信用していないわけでも、頼りにしていないわけでもなかったが、モコナとサクラがいる前で、しかも敵方にいるファイについて、容易に口に出すべきではないと思った。
阿修羅王もあえて言及はしない。

「サクラはまた出掛けた小狼が心配か?」
「・・はい。」
阿修羅王の膝の上でモコナは二人とは対照的に、料理を口に運びながら、会話に入ってくる。
「あのね、小狼無茶ばっかりするの。」
「月の城でも戦いを見たが、そのようだな。」
「確かに、危なっかしいですね。」
「そうなの。怪我とかしてもね、全然気にしないの。サクラいっぱい心配してるのにね。」
サクラは顔を紅くした。
「強い望みを持つものはその望みを叶えるまでは己を顧みない。それ故に強い。しかし見守る者は辛かろう。・・・特に、小狼は。」
「え?」
阿修羅王もまた、驚いてサクラを見る。
「気付いていないのか?」
「小狼君また怪我隠してるんですか!?」
王はにこりと微笑んだ。
「・・いや。」
真路は首を傾げた。

阿修羅王は三人を風呂に案内させ、自分は水面に目を向けた。
「・・気付かぬなら、告げる必要もないだろう。小狼が何なのか。・・のう、魔女よ。」
「そうね。」
水面に映った次元の魔女、侑子は微笑んだ。彼女の手には一本の酒瓶がある。
「対価として確かに頂いたわ。」
「無理を頼んだな。」
「いいえ、貴方の依頼がなければ、手遅れになっていたかもしれないもの。」
侑子は酒瓶を手元に降ろした。
「『モコナを強制移動させて、あの子達を阿修羅王、貴方がいる次元に落とす。』これが貴方が私にした依頼。そして、それによってあの男が作った、予定調和な世界移動は終わった。
 ・・・これで、あの男のコントロールはもう効かない。」
「・・魔女というのは縛られるものが多いのだな。人の願いを通してしか、動けないとは。」
「制約がなければ、全てはただ崩壊へと突き進むだけよ。」

水面に揺れる侑子は、これからは誰も小狼達の行く世界をコントロールできないと言った。
本当に危険な世界もある。命を落とすこともあるかもしれない。
「・・・それでも、あの男の意のままにさせるわけにはいかないの。」
そう言い終わって、侑子は少し顔をゆるめた。

「さあ、願いは叶えたわ。貴方の本当の願いを叶えるための対価は重すぎる。・・だから、後は貴方次第よ。阿修羅王。」
阿修羅王は立ち上がって、上を見上げた。その後ろに、月の城は依然として、空に浮かんでいた。


「あれは此度の計画のために生み出したもの。あの遺跡に埋まるものを手に入れる為働いて貰わねばな。」
「・・けれど、あの魔女は黙っていないでしょう。勝てますか?あの次元の魔女に。」
「勝つために打てる手は全て打ってある。それでも、あの魔女相手には完全ではない。我が血筋であるクロウ・リードが唯一認めた魔力を持つ女。次元を越え、他人を異世界に運ぶ術を知る女。・・しかし」
鏡に玖楼国の遺跡を映し出した。
「あの力はこの手に掴む。」

水槽の中の少年の鼓動はだんだんと大きな音になっていって、そして、修羅ノ国の小狼の右目に痛みが走った。


夜になって、小狼は急いで阿修羅王達に合流した。
真路は小狼の様子が少しおかしい気がした。
「・・小狼君?」
阿修羅王も気付いたらしく、小狼の顔を覗き込む。
「どうした?小狼。」
「いえ、何でも。」
「そうやって、飲み込むばかりでは、見ている誰かが悲しむだけだ。」
小狼は阿修羅王を見上げた。
「それに、秘めるばかりでは何も変わらん。」
「・・王?」
その顔には確かに、何らかの変化が見えた。

「・・・そろそろ、決着を付けよう。」
ゴゴゴ・・と音がして、辺りは月の城へと変わり始めた。

目次
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すいません。一度書き終えたんですが、次回分あたりの文章が手違いで最初の方に入ってしまっていましたので、削除しました。
一度投稿したら、誤字以外は手を加えないことにしてますが・・前後的にやはり消さねばならないと思って消しました。
ご迷惑をおかけしました。
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