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夕稀
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女性
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真面目な顔を少し俯け、そして上げた。
「・・旅してるうちに、そもそも”強さ”って、何なんだか、分からなくなってきてしまいました。」
阿修羅王がこちらを見ているのに気が付いて、我に返った。
何こんなことを、この国の王様に話してるんだろうと恥ずかしくなって、顔を真っ赤にする。
「・・あ、すいません!今のは忘れてください。」
阿修羅王はにこりと微笑んだ。
何か言いかけたが、そこへ丁度、何か用事が出来たらしく、やってきた配下の者に連れられてどこかへ行ってしまった。
代わりに家来の人が真路を別室に案内する。
ふと、窓の外を見た。
願いが叶うという城は空に変わらぬ様子で浮かんでいる。
こんなに長く、話しもしないなんて初めてだ。
何だか切なくなった自分が居て、ふっと笑う。
あそこで会うまでは、会うはずもない人だったのに、もうみんな、そこに無ければならない存在になっている。出逢わなければ、私にファイなどきっと関係なかった。
でも巡り会い、お互いに言葉を交わし、私も変わった気がする。
月の城に、置き去りにされた気がした。
何だかとても寂しかった。
サクラは食事に行った。小狼は町に行って、ファイ達を探すと言っていたが、真路は城から出ると夜叉族に間違えられ、危ないということで、窓辺で外を見下ろすしかなかった。
すると、小狼が丁度城内に入っていくのが見えて、出迎えようと駆け出す。
「小狼君・・!」
「真路さん、どうしたんですか?」
少したじろいた。
最初は大して気にしてなかったけど、敬語っていうのは目上にしか使わないらしいし・・・
用事は別にあったのだが、先に気になったことを言うことにした。
「あ・・・えっと、あのね、私一応、君と同い年ぐらいだと思うし、庶民って言うか・・・孤児だし、だから・・敬語はやめてくれませんか?呼び方はそのままで良いから。」
「あ、はい・・いや、うん。じゃあ、真路さんも・・」
「・・ああ、サクラちゃんにも言われましたけど、私は敬語って言うか・・もう癖なので。」
小狼は少し考えるような表情をした。
これが嘘だと言うこと、彼は気付いていたらしかった。
真路は溜息をつく。
「嘘です。」
あまりに率直で、小狼は驚いた。
「本当は、真似をしてるだけです。でもそうしないと、私は何だか不安になってしまうんですよ。今までやってきたことはすべて、意味がなかったんじゃないかって・・」
「・・どうして?」
そう言う小狼が何だか本当に真っ直ぐなんだな、などと思ってしまう。
不安になんて、思ったりしないんだろうか。
「・・・例えば、一人の人を斬ったら、それだけの罪を負う。だから、その為に数を数えるっていう人がいました。殺した数を、ね。」
城の中を歩きながら話す。
「十までしか数えられないから、十と十と三、という感じでしたけど。」
その時だけ振り返って微笑んだが、その後はまた前だけを見ていた。
「戦場ではそんなの、私はとても数えられないって思いました。だからせめて、大切な人を・・・」
極東国の真路のいた場所では雪が一面を覆うのは一年にほんの数回だった。その雪はいつも、嫌なことを起こした。
「大切な人を・・」
最初は家族だった。
次は久人、そしてそれも解け始めた頃、凪。
「守れなかった人を、絶対忘れないように・・。私は矛盾ばっかりで、君みたいに真っ直ぐじゃないから。」
忘れることは絶対にないけれど、そうでもしなければ、私は何も・・本当に何も出来てない気がした。母親の口調、久人の”君”という呼び方をして、凪の十字架をかけ、私は自分をごまかしているだけなのかもしれない。
真路は再び振り返って微笑んだ。
それ以上は聞かないでと言っているようだった。
「・・それより、町の方に行ってきたそうですね。どうでしたか?」
小狼は肩を落とした。
「誰も見てないって・・・目立つ人達だから、普通に歩いてたら誰かの目に留まって、すぐ通報されるからもしかしたら・・・」
「全く別の世界かもって事ですか?」
「まだ分からないけど、だとしたら・・」
「・・小狼君、こういうのは君が得意なことですよ。」
小狼は首を傾げた。
「モコナに聞きました、ジェイド国のこと。想像したり、予想するよりも、事実を集めていくように、今君が出来ることをする方が次に繋がると思いませんか?」
そう言った、真路の表情がファイと重なった。
前はそんな風に思ったことはなかったが、考えてみれば、最近真路が時々、ファイに似ているような気がする。
もちろん、姿形は全く違うし、雰囲気も違う。
「小狼君?どうかしました?」
「いや、なんでもない。有り難う。」
真路は思い出したように手を叩いた。
「ああ、そうだ。この国の人達はどんな服装でしたか?」
「え?」
「ほら、私町には行けないから・・。」
「えっと・・城の人達と同じような形で、おれ達が貰った服みたいに、炎のような柄がついてた。」
「そうですか。」
そう言ってまたすぐに小狼の方を見る。
「で、夜にはまだ時間がありますが、君はこれからどうしますか?」
「もう一度町へ行ってみるよ。」
真路は微笑んだ。
「”できること”ですね。じゃあ私はサクラちゃんと王の所にいますけど、帰ってくるのが夜になったら、月の城への場所で合流しましょう。」
小狼は頷いた。
小狼がまた降りていくのを、真路は城内から見ていた。
「町の人達まで、この国のシンボルマークみたいなのをつけているってことは・・・王様と町の人達の絆が強いのか、町の人達もこの戦いを応援してて、自分の国を誇りに思ってるってこと。戦いが長いのも、あるかもしれないけど。」
阿修羅王が月の城を見つめる目。あれは、ファイの目とはまた違ってみえた。
「それに、城の人達とあまり服装が変わらないし、ここから見る限りも、食べるのに困ってるとは思えないな。実際、そんなこと王も小狼君も言ってなかったし。」
真路はゆっくり息を吐いた。
「・・となると、王の望みはやっぱり、自分に近いことか。」
昨夜のあの瞳、あれは確かに、夜叉王に向けられていた。
「・・・・望みのままに、とは思ってるけど、許されない気持ちから、困った事をやらなきゃいいな。」
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「・・旅してるうちに、そもそも”強さ”って、何なんだか、分からなくなってきてしまいました。」
阿修羅王がこちらを見ているのに気が付いて、我に返った。
何こんなことを、この国の王様に話してるんだろうと恥ずかしくなって、顔を真っ赤にする。
「・・あ、すいません!今のは忘れてください。」
阿修羅王はにこりと微笑んだ。
何か言いかけたが、そこへ丁度、何か用事が出来たらしく、やってきた配下の者に連れられてどこかへ行ってしまった。
代わりに家来の人が真路を別室に案内する。
ふと、窓の外を見た。
願いが叶うという城は空に変わらぬ様子で浮かんでいる。
こんなに長く、話しもしないなんて初めてだ。
何だか切なくなった自分が居て、ふっと笑う。
あそこで会うまでは、会うはずもない人だったのに、もうみんな、そこに無ければならない存在になっている。出逢わなければ、私にファイなどきっと関係なかった。
でも巡り会い、お互いに言葉を交わし、私も変わった気がする。
月の城に、置き去りにされた気がした。
何だかとても寂しかった。
*
サクラは食事に行った。小狼は町に行って、ファイ達を探すと言っていたが、真路は城から出ると夜叉族に間違えられ、危ないということで、窓辺で外を見下ろすしかなかった。
すると、小狼が丁度城内に入っていくのが見えて、出迎えようと駆け出す。
「小狼君・・!」
「真路さん、どうしたんですか?」
少したじろいた。
最初は大して気にしてなかったけど、敬語っていうのは目上にしか使わないらしいし・・・
用事は別にあったのだが、先に気になったことを言うことにした。
「あ・・・えっと、あのね、私一応、君と同い年ぐらいだと思うし、庶民って言うか・・・孤児だし、だから・・敬語はやめてくれませんか?呼び方はそのままで良いから。」
「あ、はい・・いや、うん。じゃあ、真路さんも・・」
「・・ああ、サクラちゃんにも言われましたけど、私は敬語って言うか・・もう癖なので。」
小狼は少し考えるような表情をした。
これが嘘だと言うこと、彼は気付いていたらしかった。
真路は溜息をつく。
「嘘です。」
あまりに率直で、小狼は驚いた。
「本当は、真似をしてるだけです。でもそうしないと、私は何だか不安になってしまうんですよ。今までやってきたことはすべて、意味がなかったんじゃないかって・・」
「・・どうして?」
そう言う小狼が何だか本当に真っ直ぐなんだな、などと思ってしまう。
不安になんて、思ったりしないんだろうか。
「・・・例えば、一人の人を斬ったら、それだけの罪を負う。だから、その為に数を数えるっていう人がいました。殺した数を、ね。」
城の中を歩きながら話す。
「十までしか数えられないから、十と十と三、という感じでしたけど。」
その時だけ振り返って微笑んだが、その後はまた前だけを見ていた。
「戦場ではそんなの、私はとても数えられないって思いました。だからせめて、大切な人を・・・」
極東国の真路のいた場所では雪が一面を覆うのは一年にほんの数回だった。その雪はいつも、嫌なことを起こした。
「大切な人を・・」
最初は家族だった。
次は久人、そしてそれも解け始めた頃、凪。
「守れなかった人を、絶対忘れないように・・。私は矛盾ばっかりで、君みたいに真っ直ぐじゃないから。」
忘れることは絶対にないけれど、そうでもしなければ、私は何も・・本当に何も出来てない気がした。母親の口調、久人の”君”という呼び方をして、凪の十字架をかけ、私は自分をごまかしているだけなのかもしれない。
真路は再び振り返って微笑んだ。
それ以上は聞かないでと言っているようだった。
「・・それより、町の方に行ってきたそうですね。どうでしたか?」
小狼は肩を落とした。
「誰も見てないって・・・目立つ人達だから、普通に歩いてたら誰かの目に留まって、すぐ通報されるからもしかしたら・・・」
「全く別の世界かもって事ですか?」
「まだ分からないけど、だとしたら・・」
「・・小狼君、こういうのは君が得意なことですよ。」
小狼は首を傾げた。
「モコナに聞きました、ジェイド国のこと。想像したり、予想するよりも、事実を集めていくように、今君が出来ることをする方が次に繋がると思いませんか?」
そう言った、真路の表情がファイと重なった。
前はそんな風に思ったことはなかったが、考えてみれば、最近真路が時々、ファイに似ているような気がする。
もちろん、姿形は全く違うし、雰囲気も違う。
「小狼君?どうかしました?」
「いや、なんでもない。有り難う。」
真路は思い出したように手を叩いた。
「ああ、そうだ。この国の人達はどんな服装でしたか?」
「え?」
「ほら、私町には行けないから・・。」
「えっと・・城の人達と同じような形で、おれ達が貰った服みたいに、炎のような柄がついてた。」
「そうですか。」
そう言ってまたすぐに小狼の方を見る。
「で、夜にはまだ時間がありますが、君はこれからどうしますか?」
「もう一度町へ行ってみるよ。」
真路は微笑んだ。
「”できること”ですね。じゃあ私はサクラちゃんと王の所にいますけど、帰ってくるのが夜になったら、月の城への場所で合流しましょう。」
小狼は頷いた。
小狼がまた降りていくのを、真路は城内から見ていた。
「町の人達まで、この国のシンボルマークみたいなのをつけているってことは・・・王様と町の人達の絆が強いのか、町の人達もこの戦いを応援してて、自分の国を誇りに思ってるってこと。戦いが長いのも、あるかもしれないけど。」
阿修羅王が月の城を見つめる目。あれは、ファイの目とはまた違ってみえた。
「それに、城の人達とあまり服装が変わらないし、ここから見る限りも、食べるのに困ってるとは思えないな。実際、そんなこと王も小狼君も言ってなかったし。」
真路はゆっくり息を吐いた。
「・・となると、王の望みはやっぱり、自分に近いことか。」
昨夜のあの瞳、あれは確かに、夜叉王に向けられていた。
「・・・・望みのままに、とは思ってるけど、許されない気持ちから、困った事をやらなきゃいいな。」
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