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本館・徒然日記:CLAMP作品の感想などを綴ってます。雑誌のネタバレですので、コミック派の方はご注意ください。
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パチパチと音を立てるたき火の音がした。
目が覚めると、ファイの上着がかけられていて、目をこすりつつ、さくらは辺りを見回した。
「・・・小狼君。」
「目が覚めましたか?」
小狼が全身ずぶ濡れで微笑んだのを見て、さくらは心配そうに見つめる。
「黒鋼さん達は辺りを探索してくるって、ついさっき・・・」
小狼の手に触れた。

「・・・冷たい。」
その手からはまだ湖の水がしたたり落ちている。
「あれからずっと湖に潜ってたの?」
「休みながらですよ。」
小狼は微笑んだ。
「あ、その間に真路さんが姫の傍にいて下さるって言ってたんですが・・」

真路はギクリとした。
全く・・・自分の迂闊さに後悔する。なんで、ファイ達の方へ一緒に行かなかったんだろう・・。丁度、薪を拾っていたからよかったものの・・と思いつつ、木の後ろで気配を殺していた。
万が一を考えて、さくらの様子が伺いやすいように、すぐ近くにいたので会話は筒抜けだった。

さくらは小狼のこと、憶えていないけれど、それでも二人が並んでたき火の前に座っている様子は微笑ましいものだった。
小狼は自分すら顧みず、さくらのために一生懸命になっている。
さくらもそんな小狼との距離をほんの少しずつだけど、狭め始めているように思う。

彼みたいに、想い続けて、頑張れば、いつか振り向いて貰えるんだろうか?
それとも、この二人は元々互いに想い合ってたみたいだから、それは必然なんだろうか・・。

真路は木に寄りかかって、足元を見た。青々とした地面の間から赤褐色の土が見えた。そしてガバッと顔を上げる。
「・・・って、違う」
真路は眉をひそめた。勝手な考えを巡らせた自分に怒りすら感じた。その顔に力が入る。
なのに、泣きそうだった。
「私は、そんなこと・・・」


極東国は真路が生まれた頃にはもう戦争を始めていた。
やっと物心つく頃に両親が殺され、政府に拾われて、少国民しょうこくみん隊に入った。
そこでの親友もいて、それなりに楽しかったし、真路の生活の殆どは人を殺めることだったが、どちらも刃を向ける以上、戦場では皆同等だった。
だから、相手を可哀想とか、悪いという意識はあまり無かった。
自分がもし戦場や敵の本拠地で殺されても仕方ないと思っていたし、そうならないように皆最善を尽くす。
そういうことだと思っていた。

冷たい鍵の感触は手に突き刺さるようだった。
真路がそれを使って中に入ると、彼女はすくっと立ち上がって、小刀を構えた。きっと彼女からそれを取り上げるのはあの人達には難しかったんだろう。
「真路!」
彼女は真路にまた同じ質問をする。
「どうして?どうして、あの子を見捨てたの・・?」
「・・・君は、優しいですね。それに、凄く強い。」
ここは暗く、真路の表情に丁度影を落とす。
「でもね、ここに入ったら・・刀を持ったら、それじゃ駄目なんだよ。――私はあの時あの場のみんなの命を預かってたから。一人のために、他の誰かを犠牲には出来ません」
「だから、親友をそのままにして置いたの・・!?」
「――君は、久人のこと、好きだったんですよね?」
「答えてっ!!」
「・・そうです。・・・君は私がここに来た理由も分かっているでしょう?」
彼女は瞳にいっぱいの涙を溜めて、真路に突進してきた。
真路は避けないし、防がなかった。そのままその小刀は真路の横腹に突き刺さって、彼女は目を見開いた。
「・・・どうして」
真路は彼女の背中に腕を回した。
いつの間にか、真路の背は彼女をわずかに越している。

「・・・やっぱり、君には向いてなかった・・」
真路は袖から小刀を出して、彼女の背中に突き立てた。
彼女の躯から力が抜けて、でもまだ生暖かくて、手が小刻みに震えた。
自分に刺さった小刀を抜いて、彼女を床に寝かせる。彼女の頬の上の涙は勝手に流れ落ちた。
彼女の心臓を貫いた刀を引き抜いて初めて、彼女の返り血が飛ぶ。みるみる床は紅く染まっていった。

窓一つ無いこの場所には何も聞こえない。鉄の格子もこの空間を保って、ここだけに時間が止まったようだった。
真路は彼女の刀を拾って牢屋から出る。
「とうとう、真路までここに来ることになってしまったか・・」
水瀬は哀しげに見つめた。
「上から言われたんだろ。」
「水瀬、私・・・」
何を言ったらいいのか分からなくなって、水瀬がまた口を開いた。
「・・俺らは所詮は孤児。お前がいくら有能だったとしても、上に背けばお前もやられる。あいつだって、助かるわけでもない」
真路が思っていたこと、彼女は少なくともそうは思っていなかった。彼女は色んな意味で強く、優しかった。
彼女は、真路の敵でもなければ、嫌いな相手でもなかった。親友だった。
「私・・・私は、そこまでして、ここに居たかったのかな?」
水瀬は黙って頭を撫でた。
「・・お前には、やらなきゃならないことがあるんだろ。」
「私・・」
「泣くな。俺達にその資格はない。」


「今、なんか声聞こえなかった?」
真路はさくらの声で我に返った。同時にビクッとする。
その時、湖から強い光が放たれて、二人はそちらに振り返った。

「姫はここにいて下さい!!」
小狼は湖の中に飛び込んでいった。


目次
  

<あとがきと裏話>
さらーっと真路の過去がわかりましたね。最初は全部やるつもりだったんですが・・・それだとちょっと、もはや「霧の国」編じゃないなと思ったんで、その一番重要?な部分だけを。
ちなみにもくじで最初、次がジェイド国になってたのはミスです。
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