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夕稀
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女性
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「そんな風に、私は私なりの方法で、前に進めたって、思いたいんだ。」
水は乾いて、蝙蝠に似た紋章は空気の中に溶け込んでしまった。
結局この時、このマークを真路とモコナ以外が見ることは無かった。
「あの剣の、蝙蝠のような飾りに見覚えがあるんです。」
「何だと!」
「玖楼国の遺跡で襲ってきた奴らの服や手剣のマークと同じなんです。」
黒鋼は一度落ち着いて、腕組みした。
「玖楼国ってのはお前と姫がいた国だな。」
「はい。けど、玖楼国では見たことのない風体と武器でした。近隣国の者でもありません。すぐに送って頂いたから、詳しくは分からないんですが・・・・ひょっとしたら、異世界から来た者達だったのかもしれません。」
小狼は黒鋼の目を見る。
「だから、黒鋼さんのお母さんの祈り場に現れたのも・・・」
「・・・なるほど。つまり、このまま世界を渡っていきゃあ、あの刀の奴に会えるかもしれねぇって事か。」
水槽の中で眠っている小狼と似た少年の前に星火がいた。
「人は何故、出来ないことを、やろうとするのかしら。」
努力すれば、出来ることはある。
しかし、だからといって必ずしも結果に影響するとは限らないし、絶対に出来ないこともある。
「飛王 は不可能を可能にしようとして、そして願ってる。」
気泡は少年の体を通り抜けていく。
彼の願いはなるほどこういうものかもしれない。
「・・・・終わってしまった夢をもう一度、と。」
夢のように儚く、気泡のように、脆い。
最初に開いた者の過去を写し、次に開いた者に見せる本、”記憶の本”。その複本を小狼が開いたらしい。
原本にサクラの羽根が入っていることが分かって、五人は中央図書館へと移動した。
しかし国宝だという”記憶の本”は閲覧禁止で見ることすら出来ないことが分かった。
「どうするつもりですか?小狼君。」
「それでも取り戻します。」
「どうやって?」
「・・・盗みます。」
この言い切り様に驚きつつも、真路は何だかおかしくなって笑ってしまった。
夜の方が警備が厳しいだろうと言うことで、開館中に図書館へ入った。
サクラはおどおどしているし、ファイは・・・いつも通りなのだが、サクラと並ぶと怪しく見えるのが不思議だ。
もしかしたらファイは意外と嘘が下手なのかもしれない。
「・・・嘘くせぇ。」
「どこが――?」
ファイは黒鋼に接近する。
「その顔がだよ。」
ファイは更に近づいた。
「え―満面笑顔なのに――」
ファイは黒鋼の頬を横に引っ張った。
「ほら、黒たんも笑顔、笑顔。じゃないと怪しまれちゃうでしょ――」
小狼とサクラは反応に困っている。
「わ―、嘘くさ―い。」
当然だ。
絶対怒ってる・・・。
「・・・白まんじゅう、刀出せ。」
「駄目だよ―、刀なんか振り回したら―。図書館から追い出されちゃう。」
「だったら余計な茶々入れんな!!」
モコナが羽根の波動を辿って、壁の前に行き着いた。
「何もねぇぞ。」
「壁よ、モコちゃん。」
「でも、ここから感じる。」
「国宝と言ってましたし、何か仕掛けでも有るんでしょうか?」
真路はドアをノックする要領で、壁を手の甲で叩いてみる。
軽い音がして、真路ははっとした。向こう側が空洞だと言うことだ。
「ちょっといい―?」
ファイがすっと前に出て、壁に触れ、横の本棚に触れてみる。
「あ―。これ、魔法壁だよ。」
ファイはその本棚を指差して、向こうに動かすように言った。
「ああ?なんで俺が。めんどくせー。」
「お願い―。おとーさん。」
モコナによるファイの声だった。つづいて黒鋼の声になる。
「しょうがないなぁ、かーさんの頼みなら。」
「ささ、その怒りを本棚に―」
「くっそー!」
それで本当に動かすから、「意外と単純だなぁ・・」と真路は笑う。
「ああ?何か言ったか?」
「いいえ。気のせいじゃないですか?」
壁が消えて、その先の道が見えた。
「凄いです、ファイさん。」
「ん―、ちょっとでも魔法の勉強したことあるなら分かるよ―」
五人は中へと進んでいく。
「国宝とか言ってた割には、入口の仕掛け以外は何もねぇのかよ。」
「そんなワケないでしょ――」
両脇の像からパキパキと音がする。
「ほら、早速。」
石像は動き出して、五人に迫ってくる。
「登場――」
真路は髪に付けていたピンを外した。
入口といい、この石像が来る前に分かったってことはやっぱりそれなりの力の持ち主って事なんじゃないか?
石像の巨体をさっとよけ、その瞬間にピンを目に突き刺す。
ファイは手を出さないが、しっかりサクラを守りつつよけている。
「あ。今ちょっと、口笛っぽい音出てなかった――?ね、ね、黒たんってばぁ。」
「ちっとはおまえも手ぇ出せ!」
随分倒したかと思うと、他の石像までもが動き始め、五人は囲まれてしまった。
「走って!!」
小狼はサクラの手を掴んで走り出す。真路も折れてしまったピンをその場に捨てて後を追いかける。
石像の並ぶ道から抜けると、玖楼国の遺跡が目の前にそびえ立っていた。
しかし移動したのではなく、本を守るための仕掛けだとわかり、遺跡の奥へと進んでいった。地下の羽根のような模様の付いたところが突然光って開き、そこにそこの見えない大きな穴ができる。
羽根の波動はその下からだった。
小狼が行こうとすると、黒鋼も前に出る。
「この世界にはあの蝙蝠の刀の奴はいねぇようだからな。だったら用はねぇ。」
「蝙、蝠・・?」
「羽根が手に入りゃ、白まんじゅうは次の世界へ行くだろ。」
真路は砂盤の上のマークを思い出す。
左右対称であの翼を広げた蝙蝠のような形。
「行くぞ。」
「はい!」
この場で聞きたかったが、後にすることにした。
しばらくして、ブザー音と共に辺りの光景は消え、洞窟のような場所になる。穴に入ったはずの二人も目の前にいた。
サクラは小狼に駆け寄る。
小狼ははっとして、サクラに羽根を入れる。
黒鋼はじっと小狼を見ていた。
「黒様・・・?」
「どうか・・しましたか?」
小狼に促されて、モコナは羽根を広げたが、いつもと様子が違う。
「だめ!魔法陣が出ない!」
黒鋼がサクラを抱えて、五人は走り出した。
入口を出るともう一体の番犬が待ちかまえていた。
「モコナ!刀は出せますか!?」
「だめ!出ないー!」
ファイはもうすっかり口笛が吹けるらしい。
「武器にも防除魔術有効か――」
「これは結構、マズいですね・・・。」
黒鋼の指示で小狼は番犬の足を蹴り、バランスが崩れた隙に五人は逃げる。
警備員までもが追いかけてくる。
何とか外に出た。
「道が、海みたくなっちゃってる!」
そこにファイが帽子を投げ入れると溶けてしまった。
そうこうしている間に番犬と警備員が追いついてきた。
「きゃー!」
真路は唇をぐっと噛む。
その時、口笛が聞こえた。
そっと顔を上げると、何かが五人を覆っている。それが番犬の炎を遮っていた。
唖然とする三人をよそに、ファイはモコナに移動するように言った。
「でも、魔法陣が・・・」
「この中なら大丈夫だよー」
モコナがもう一度試してみると、ファイの言ったとおり、今度は魔法陣が現れた。
「ファイ・・・?」
真路は心配そうな表情でファイを見つめていた。
→目次
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水は乾いて、蝙蝠に似た紋章は空気の中に溶け込んでしまった。
結局この時、このマークを真路とモコナ以外が見ることは無かった。
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「あの剣の、蝙蝠のような飾りに見覚えがあるんです。」
「何だと!」
「玖楼国の遺跡で襲ってきた奴らの服や手剣のマークと同じなんです。」
黒鋼は一度落ち着いて、腕組みした。
「玖楼国ってのはお前と姫がいた国だな。」
「はい。けど、玖楼国では見たことのない風体と武器でした。近隣国の者でもありません。すぐに送って頂いたから、詳しくは分からないんですが・・・・ひょっとしたら、異世界から来た者達だったのかもしれません。」
小狼は黒鋼の目を見る。
「だから、黒鋼さんのお母さんの祈り場に現れたのも・・・」
「・・・なるほど。つまり、このまま世界を渡っていきゃあ、あの刀の奴に会えるかもしれねぇって事か。」
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水槽の中で眠っている小狼と似た少年の前に星火がいた。
「人は何故、出来ないことを、やろうとするのかしら。」
努力すれば、出来ることはある。
しかし、だからといって必ずしも結果に影響するとは限らないし、絶対に出来ないこともある。
「
気泡は少年の体を通り抜けていく。
彼の願いはなるほどこういうものかもしれない。
「・・・・終わってしまった夢をもう一度、と。」
夢のように儚く、気泡のように、脆い。
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最初に開いた者の過去を写し、次に開いた者に見せる本、”記憶の本”。その複本を小狼が開いたらしい。
原本にサクラの羽根が入っていることが分かって、五人は中央図書館へと移動した。
しかし国宝だという”記憶の本”は閲覧禁止で見ることすら出来ないことが分かった。
「どうするつもりですか?小狼君。」
「それでも取り戻します。」
「どうやって?」
「・・・盗みます。」
この言い切り様に驚きつつも、真路は何だかおかしくなって笑ってしまった。
夜の方が警備が厳しいだろうと言うことで、開館中に図書館へ入った。
サクラはおどおどしているし、ファイは・・・いつも通りなのだが、サクラと並ぶと怪しく見えるのが不思議だ。
もしかしたらファイは意外と嘘が下手なのかもしれない。
「・・・嘘くせぇ。」
「どこが――?」
ファイは黒鋼に接近する。
「その顔がだよ。」
ファイは更に近づいた。
「え―満面笑顔なのに――」
ファイは黒鋼の頬を横に引っ張った。
「ほら、黒たんも笑顔、笑顔。じゃないと怪しまれちゃうでしょ――」
小狼とサクラは反応に困っている。
「わ―、嘘くさ―い。」
当然だ。
絶対怒ってる・・・。
「・・・白まんじゅう、刀出せ。」
「駄目だよ―、刀なんか振り回したら―。図書館から追い出されちゃう。」
「だったら余計な茶々入れんな!!」
モコナが羽根の波動を辿って、壁の前に行き着いた。
「何もねぇぞ。」
「壁よ、モコちゃん。」
「でも、ここから感じる。」
「国宝と言ってましたし、何か仕掛けでも有るんでしょうか?」
真路はドアをノックする要領で、壁を手の甲で叩いてみる。
軽い音がして、真路ははっとした。向こう側が空洞だと言うことだ。
「ちょっといい―?」
ファイがすっと前に出て、壁に触れ、横の本棚に触れてみる。
「あ―。これ、魔法壁だよ。」
ファイはその本棚を指差して、向こうに動かすように言った。
「ああ?なんで俺が。めんどくせー。」
「お願い―。おとーさん。」
モコナによるファイの声だった。つづいて黒鋼の声になる。
「しょうがないなぁ、かーさんの頼みなら。」
「ささ、その怒りを本棚に―」
「くっそー!」
それで本当に動かすから、「意外と単純だなぁ・・」と真路は笑う。
「ああ?何か言ったか?」
「いいえ。気のせいじゃないですか?」
壁が消えて、その先の道が見えた。
「凄いです、ファイさん。」
「ん―、ちょっとでも魔法の勉強したことあるなら分かるよ―」
五人は中へと進んでいく。
「国宝とか言ってた割には、入口の仕掛け以外は何もねぇのかよ。」
「そんなワケないでしょ――」
両脇の像からパキパキと音がする。
「ほら、早速。」
石像は動き出して、五人に迫ってくる。
「登場――」
真路は髪に付けていたピンを外した。
入口といい、この石像が来る前に分かったってことはやっぱりそれなりの力の持ち主って事なんじゃないか?
石像の巨体をさっとよけ、その瞬間にピンを目に突き刺す。
ファイは手を出さないが、しっかりサクラを守りつつよけている。
「あ。今ちょっと、口笛っぽい音出てなかった――?ね、ね、黒たんってばぁ。」
「ちっとはおまえも手ぇ出せ!」
随分倒したかと思うと、他の石像までもが動き始め、五人は囲まれてしまった。
「走って!!」
小狼はサクラの手を掴んで走り出す。真路も折れてしまったピンをその場に捨てて後を追いかける。
石像の並ぶ道から抜けると、玖楼国の遺跡が目の前にそびえ立っていた。
しかし移動したのではなく、本を守るための仕掛けだとわかり、遺跡の奥へと進んでいった。地下の羽根のような模様の付いたところが突然光って開き、そこにそこの見えない大きな穴ができる。
羽根の波動はその下からだった。
小狼が行こうとすると、黒鋼も前に出る。
「この世界にはあの蝙蝠の刀の奴はいねぇようだからな。だったら用はねぇ。」
「蝙、蝠・・?」
「羽根が手に入りゃ、白まんじゅうは次の世界へ行くだろ。」
真路は砂盤の上のマークを思い出す。
左右対称であの翼を広げた蝙蝠のような形。
「行くぞ。」
「はい!」
この場で聞きたかったが、後にすることにした。
しばらくして、ブザー音と共に辺りの光景は消え、洞窟のような場所になる。穴に入ったはずの二人も目の前にいた。
サクラは小狼に駆け寄る。
小狼ははっとして、サクラに羽根を入れる。
黒鋼はじっと小狼を見ていた。
「黒様・・・?」
「どうか・・しましたか?」
小狼に促されて、モコナは羽根を広げたが、いつもと様子が違う。
「だめ!魔法陣が出ない!」
黒鋼がサクラを抱えて、五人は走り出した。
入口を出るともう一体の番犬が待ちかまえていた。
「モコナ!刀は出せますか!?」
「だめ!出ないー!」
ファイはもうすっかり口笛が吹けるらしい。
「武器にも防除魔術有効か――」
「これは結構、マズいですね・・・。」
黒鋼の指示で小狼は番犬の足を蹴り、バランスが崩れた隙に五人は逃げる。
警備員までもが追いかけてくる。
何とか外に出た。
「道が、海みたくなっちゃってる!」
そこにファイが帽子を投げ入れると溶けてしまった。
そうこうしている間に番犬と警備員が追いついてきた。
「きゃー!」
真路は唇をぐっと噛む。
その時、口笛が聞こえた。
そっと顔を上げると、何かが五人を覆っている。それが番犬の炎を遮っていた。
唖然とする三人をよそに、ファイはモコナに移動するように言った。
「でも、魔法陣が・・・」
「この中なら大丈夫だよー」
モコナがもう一度試してみると、ファイの言ったとおり、今度は魔法陣が現れた。
「ファイ・・・?」
真路は心配そうな表情でファイを見つめていた。
→目次
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真路は魔法が使えないので、どうしても活躍シーンがなくなってしまうレコルト国・・・。そもそも短いのもありますしね。
さて、次は「東京」です。
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